コンパクトなインパクト
「それはどんな練習だ?」
ボールドウィン・ストライカーは試合の描写があまりない。そのあたりはサッカー漫画に任せよう。
「はい。キックの精度を上げるために、まずは弱いキックから感触を確かめるんですよ」
そのあと強いキックを蹴り、感覚の微調整をする。ノボルはシュートなら左足が得意だが、パスなら右足のほうがコントロールしやすいとの自覚があった。
「なるほどな。キックの強度を上げてズレが出たら強度を下げて蹴り直す。それを繰り返していくってことだな」
右から行く決野、左から行くノボル。点取り屋たちは、次の練習に移る。フォワードに求められるポストプレイ。これが巧みになればなるほど、得点力はあがる。
メッシに代表されるように、小柄なほうがドリブルの小回りが効く。真ん中は千田虎央。ノボルよりかろうじて背が高い程度だ。ノボル・千田・決野が、日本代表のトライセラトップスだ。あるスポーツ記者は言った。日本には3つの銃があると。
「ボル、ポストやってくれ」
千田が若き後輩に頼む。
チョップキック、チップキックのテクニックがあるが、ポストプレイでも有効である。ノボルに真壁がマークに付く。
オフェンシブハーフの出井悟が、ボルの扱いやすいスポットに極上のボールを供給した。
ノボルが球の下を甲で掬うと、真壁の足の届く範囲を超え、これ以上ないと言うような軌道でラストパスが転がった。
千田の前に立ちはだかるのは、正ゴールキーパーの風林源道。こんなボールを通されたらひとたまりも無い。
フェイント一、二回。千田は落ちついてゴール左隅に蹴り上げた。横っ飛びも及ばず、風林のキャップは裏返って着地した。
赤い稲妻がワールドカップのゴールを攻める。日本代表は3-4-3にシフトしてから劇的に変わった。どんなに優れた個性も、土壌が汚染されていては芽の出ようがない。
そして、それらを束ねる三浦監督との縁。日本代表を選考するのであるから、ものすごい権力と尋常でない重圧である。
自分が代表時代、辛酸を舐め尽くした三浦。このチームならやれる。不振で始まったサッカー人生に、革新が起きつつあった。




