反れ反れピチピチ海老動理
「ッテ・・!」
日本の最終防衛ライン、センターバックの真壁鐵男。激しい攻撃にさらされるため、生傷が絶えない。
真壁は身長も190センチと高く、筋骨隆々である。だが、ここのところダメージの回復が遅いのが悩みの種であった。
FWはボールを持っていない間、上手に休むものである。ところが、ノボルは試合の最中、ひっきりなしに走り回っている。普段そこまで喋るほうではない真壁も、自然と興味を持った。
「ボル、ちょっと来てくれ」
リーナのボル呼びが浸透しつつあった。立ち止まりすぐ駆けつけるノボル。
「お前ウエイトは全然やらないんだったよな? 俺もトレーニングメニューを大幅に変えようと思っていてな」
躍動という表現を昨今耳にするが、高く速くおどることとウェイトとは、両立しづらい関係にある。
「僕はもっぱらキャリステニクスですね」
自重は負荷が軽いように思われるが、体勢によって局所的に掛かる負荷は、想像以上である。
「ああ。お前はいつも鉄棒にぶら下がってるよな」
14歳ということもあるが、ノボルの躰はまだ成長途上だ。どこにあのダイナミックな力があるのかと真壁は常々思っていた。
「色んな人が言ってますけど、僕は背中だと考えています」
開脚で躰が前に倒れないのは背中が硬すぎることが原因だったりする。
「そうだな。体幹トレーニングと言われて久しいが、脚光を浴びやすいのは腹筋だったりする」
割れたシックスパックは、見栄えも受けもいい。
「腹筋も大事ですけど、全身を使うって観点からなら、手足の原動力となる背中じゃないかと」
ノボルの背筋力も大したものである。
「それでよく懸垂をやってるんだな」
これは体重が軽いノボルのほうが有利である。
「はい。ただ怪我を防ぐっていうことなら、僕はブリッジをやりますね」
背中を反り、肋木を伝って一段づつ降りていくノボル。
「それはいいな。俺も取り入れよう」
前側を鍛えるトレーニングばかりが人気だが、裏が表を支配するのがこの世の常だ。
「っく、結構キツいな!」
真壁にとって馴れない動きだったが、直感的にブリッジの必要性を察した。
背骨周辺の凝りが取れると、リラックス効果が生まれ、様々な発想が湧いてくる。体の中の交通渋滞が無くなると言ってもよいだろう。これはサッカーだけに止まらない。
「無理に最初から一気にやろうとしないほうがいいですよ。気持ちいいところで止めて馴れたらもう一段下げてっていうのがベストです」
ところで、海老反りって逆向きだよなと疑問に思うノボルなのであった。




