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ボールドウィン・ストライカー  作者: 三重野 創


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3/17

ライン際の魔術師

 サッカー日本代表の選考テストを終え、ノボルはリーナの家に邪魔していた。リーナの自宅はバレエ教室である。リーナは、実の母からバレエを教わった。


「後は発表を待つだけね」

 リビングでボルとリーナがコタツで暖を取っている。


「いや~、さすが日本代表だね! ゾクゾクしたよ!」

 コタツの天板をひっくり返すと、ラシャ張りの緑のサッカーコートが現れた。ここでノボルはよく作戦会議をするのだ。


「ボルもお見事だったわよ」

(ボルって褒めても責められても良い風に捉えるのよね)


「オブリガードゴブリンガード」

 ノボルなりの照れ隠しだ。    


「いきなり紅白戦だったもんね」

 よく成立した物である。


「知ってる? 一年前まで決野さんってLWだったんだよ。でもそこで思ったように点が取れなくてさ」

 いまやその逆サイドのRWで、右に出る者の居ないポイントゲッターへと飛躍した。


「例のアレでしょ。右利きは右サイド、左利きは左サイドが良いっていうボルのポリシー」

 ノボルの信条に反して、左利きが右サイド、右利きが左サイドに納まるフォーメーションを昨今目にする。リーナはつらつらとサッカーのトレンドを述べた。


「そうそう。あれが我慢できなくてさ。ネットのサッカーコミュニティで書いたことがあるくらいなんだよ」

 この書き込みが切っ掛けで決野のポジションが変わったことは、ノボル自身も知らない。

「あたしでも分かるわ。メリットだけで3つはすぐ思いつくもの」

 リーナが右ライン際にサッカーフィギュアの駒を置く。


「まず右利きは右足でコントロールするから、相手DFとボールの間に、左半身が壁となる」

 DFの駒をググーッっと寄せる。 


「うん。そのまままっすぐ走って並走しても、ボールは確実に奪われにくいんだよ」

 これが左足でコントロールするRWなら、リスクは跳ね上がる。


「2つ目。左利きのRWはグラウンドをめいっぱい使えないってこと。それはそうよね。ラストパスを左足で送ることになるから、コーナーフラッグまで行けないもの。右利きのRWはフルで使えるわ」

 かなり早い段階で切り返してセンタリングを上げるシーンが目につく。


「3つ目。センタリングの軌道の優位性。左利きのRWが増えた最大の理由だけど、センタリングがゴール方向へ伸びるからゴールに結びつきやすくなる、なんてまことしやかに言われてたわよね。実際は違うんだけど」

 ノボルが持論を述べる間もなく、リーナは戦術を理解している。それから、ゴール方向へ伸びるボールに足を合わせるのは、高等テクニックが要求される。反対に、前からコロコロ転がってくるボールは、容易にシュートできる。


「キーパーからしたら、ゴールエリアから遠くなるセンタリングのほうが厄介なんだよ。向かってくるボールは跳ね返しやすいし」

 ゴールライン際からマイナスへのパスは、GKが飛び出すには勇気が要る。


「左サイドの右利きも同様ね。上がっていくと最後は切り返して右足で処理してる」

 このわずかのロスが、得点シーンを遠のけてしまう。


「コーナーキックも同じ話かな。直接狙うなら右コーナーは左利き、左コーナーは右利きってなるんだろうけど、さっき言ったようにマイナスのボールをねじ込むのが基本だから、右コーナーは右利き、左コーナーは左利きがベターだね」

 利き足とLRのウィングが一致していれば、ポジション移動の負担も減る。 


「ウィングが自らシュートに持ってくのも、利き足側のポジションにいたほうが絶対得なんだよ」

 左利きのRWは中央に切り込むことになる。真正面からのシュートはキーパーが反応しやすい。加えて、全方向からDFが止めに入る。右利きのRWなら、片方からのDFを気にすれば良い。ライン際と同じで、ボールとDFの間には左半身がブロックしている。その盾を使いながら前走し、フリーの右足を振り切ればゴールネットを揺らしやすくなる。まさかDFも、ゴールとRWの間を遮断せず、右側からボールを取りに行くことは出来ない。


「現にそれで決野さんが点を取りまくってるのが、動かぬ証拠だわ」






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