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ボールドウィン・ストライカー  作者: 三重野 創


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手にOHA!

 サッカー日本代表になっても、夏休みの宿題は免れない。赤点は容赦なく追試が課される。教場でも球技場でも、点取り屋であることが求められる。


「あとは読書感想文ね」

 リーナの家にお邪魔している。


「自由研究と読書感想文が、夏休みの宿題の二大関門だよ」

 リーナに比べて、優等生とは言い難いノボル。


「読書感想文の代行なんて、カンニングみたいなものよね」

 ライトノベルをいくら投稿しても、一円にもならない。一枚3,000円ももらえるのなら、高給取りだ。


「それをやっちゃあおしまいだよ感があるなあ」

 いくら落ちこぼれても、越えてはいけない一線は認識しているノボル。


「下手でいいのよ。むしろ通り一辺倒にならなくて清々しいわ」

 リーナは文学少女でもある。上の用法は間違いとされるが、その考えでは辞書が改訂されない。


「ボルくんいらっしゃい」

 リーナの母親がオレンジ色の扉を開けた。差し入れのバヤリースと味千両を携えて。


「お邪魔してます」

「ありがとう、お母さん」

 リーナママです。みんな今日も、元気に挨拶したよね。


「読書感想文ね。お母さん、それ得意だったのよ」

 文集で上手いエッセイを残す生徒というのは、クラスに2~3人はいたものである。


「わっ、さすがですね。何か心掛けることとかありますか?」

「わたしも知りたいわ」

 やんちゃ坊主、やんちゃガール。お日様よりも早起き。


「そうね。テーマはなんでもいいのよ。まずは“てにをは”を意識することね」

 名詞・形容詞などの実辞を使いこなすほうが大事に思えるが、てにをはの虚辞が不正確だと、途端に文章が崩壊する。


「ああ~、なるほど! ちゃんと成立した文章を書くように念頭に置くんですね。そのあとの飾り付けは後から施す、と」

 外国語なら単語をポンポン並べるだけでコミュニケーションが取れるかもしれないが、こと日本語に関しては、不用意なてにをはの使用でまったく伝わらなくなってしまう。


「会話もそうよね。てにをはが使いこなせてないと、『は?』って聞き返されちゃう」

 語尾もはっきり言い切ろう。ミドル・シニア世代は、ヤング世代と比べて声の通りが良い。


「ゆっくりになってもいいから、ちゃんと成立するように話さないといけないわ」

 リーナママの言う通りである。早口なのを誇らしげにしてしまう勘違いが散見されるが、自分の話を聞いてもらって返答を期待する側の態度としては、いささか身勝手である。


(ボル、最近サッカーやってないけど、いいのかしら?)

 サッカー選手には、作家~性が求められる。










    

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