超臭力
「汗はかけ。だが臭いを放置するな」
ディフェンシブハーフ、日本代表キャプテンの奥義要が、訓示を垂れた。
「昭和とは違いますからね。そんなんじゃファンも逃げ出しますよ」
追っかけが一番多い決野。なにかと昭和が悪い例で出されるが、令和が万事上手く行っているとは、とても言えない。
「体育会系の永遠のテーマっスね」
千田虎央の車内は、ココナッツの香りがする。
「シャワー・風呂はもちろんのこと、身に付ける物や室内も気をつけんとな」
ここには居ないが、奥義と出井は縦の連携が面白いように決まる。
「香害なんて言われますけど、さすがに汗臭の前ではかすみますね」
ノボルは幼馴染みにおせっかい焼きがいるので、身だしなみは保たれてきた。
「あんまり人任せにも出来ないからな。触って欲しくないものもあるし」
人に掃除をやらせっぱなしだと、捨てられて大事なものを無くす可能性がある。かくいう決野がそれだ。
「靴箱とロッカールームの臭いが限界値を越えそうなんだ」
個々の靴を消シューしなければならない。ロッカールームはいくら気をつけても、臭いの元が次から次へとあらわれる。
「実家でも使ってますけど、消臭力がいいんじゃないですか?」
トイレ用だけではない。リビング用や玄関用もある。
「あれ、結構長持ちするんだよな!」
決野は、嫌みの無いムスクの香りがする。
「へえ、早速置いてみるといいんじゃないか」
千田はゴールへの嗅覚も敏感だ。
「万人に受ける石鹸の匂いがいいな」
奥義は頑として石鹸派だ。
愛する人はシャボン玉石鹸。誰も邪魔はさせない。
「もしかして、ノボルのロッカーにあったの、消臭力か?」
千田とはロッカーが隣同士である。
「そうなんですよ。中学生から見ても安いですし」
ここからスターダムへとのし上がる。
「そんなのあったか? 全然匂いしなかったぞ」
決野はプロミネンス禍でも鼻に異変が生じることは無かった。
千田が残量を確かめる。
「切れてないっスよ」




