eye candyよりI can doer
「カッコだけか?」
服装や見た目だけを気にし、中身の伴わない人間を嫌う出井悟。街頭演説をする若手の政治家は、言葉が空虚に感じた。
「ディエゴ、お前から見たら物足りないだろうな」
真壁が声を掛けた。出井はスポーツ推薦ではなく、一般入試で早稲田の政経に合格した。
「ウチの若い衆を見習ってもらいたいね」
決野、千田、火輪還の三人のことである。
「あいつらは口だけでも見た目だけでもなく、ちゃんとFWの仕事をするからな」
目立とうとする性格とストライカーは、相性がいい。
「こういう演説で野球はよく使われるが、サッカーはあまり出て来ないな」
9回ツーアウトからの大逆転。サッカーならイエローカード・レッドカードは日常でも耳にする。
「ま、時間の問題じゃないか?」
ドーハの悲劇で絶望の夜を過ごした世代が、日本の労働のコア層になっている。
再生数を増やそうとする魂胆とルッキズムは、手を結びやすい。動画の悲劇だ。
「YouTubeでもなんでもいいんだが、チャンネル主が喋ってる時間が長いだろ? あれだったらラジオでもいいんじゃないかと思えるぜ」
動画もほぼ固定画角である。動画を回そうと思えば、それなりに準備はいる。
「すでにそういうSNSはあるよな。あまり人気は無いみたいだが」
キラーコンテンツのメシには、やはり映像を求められる。
「可愛い女の子ばかり揃えても、どんなことを話すのかってのを軽視したらあんまり続かないんじゃないのか」
かわいいだけじゃ駄目ですか? ダメです。
「動画を再生しながら耳で聞いてるだけってのはよくあるからな」
ダレシモが発信するので、手が伸びて届きやすい存在に。
「サッカーの解説動画なら分かりやすい実演はもちろんのこと、ちゃんとコンテ切らないとな」
ぶっつけ本番で回しては碌な映像にならない。
「そこまで考えるのは頭が痛いな。俺は戦術の話は紙とペンで充分だ」
真壁は細かいことが苦手だ。
「そうだな。見てくれは試合に任せて、実況や解説は喋ることに注力すればいいんだからな」
現役選手のそういう戦術を聞く場も欲しいものだ。
「サッカーそっちのけでチアガールばかりが注目されたら凹むぞ」
真壁は昭和の男を想起せさる。
「サッカーだけでも駄目なんだよなあ」
新庄監督は大したものだ。




