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ボールドウィン・ストライカー  作者: 三重野 創


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10/17

履き違えるのが襲名か

「ノボル、お前もスポンサーが付いたようだな」

 ノボルはアシックスが自分の足に合っているとの自覚があった。


「はい。アシックスは一番ボールの吸い付く感覚があって、コントロールしやすいんです」

 サッカー部では海外製のものを履く先輩方もいたが、ノボルはしっくり来なかった。


「日本人の足に合う靴を作れるのは、そら日本のシューメーカーだよなって話だぜ」

 決野はドイツのスパイクを履いていたが、アシックスも検討し始めている。


(オヤジもスパイク選びにはうるさかったよな)

 決野の父はJリーグ草創期に名を馳せた、名プレイヤーであった。


「大昔は黒しかなかったですが、いまはカラーが豊富になりましたよね」

 ノボルは肉食家だが、彩色主義者である。


「そうだな。ジャパンカラーにもしてくれるぜ」

 白地に赤い日の丸。やっぱりこの国を愛してる。


「ユニフォームがトリコロールですから、合うでしょうね」

 ガンダムやキティちゃんなど、正義の使者や主人公のイメージカラーだ。


「ちょっと貸してくれよ。俺も試しに蹴ってみるわ」

 決野とノボルは0.5しか靴のサイズが違わないので、そこまで不具合は無かった。


「この甲へのまとわり具合が、いい感じだ!」

 ノボル用に作られているので、決野向けに作ればもっとフィット感は増すだろう。


 シュート練習にいつもより熱のこもる決野。ノボルも早く蹴りたくてウズウズしている。


「狙ったとこへの誤差が少ないな!」

 ナイスシュートを決めるにはボールポジションが重要だが、ノボルのスパイクはいいところにセットすることが容易かった。


「こりゃトラップも楽だぜ」

 攻防は靴を選ぶ。


「決野さ~ん、そろそろ・・・」

 W杯アジア予選の得点数で、ノボルに1点リードされていたことに、闘志を燃やしていた決野。勝負の世界に遠慮や情けは無用だ。いつ自分がお払い箱になるか分からない。みんな命懸けだ。誤審が後を絶たないが、選手生命を左右しかねないことを肝に銘じて欲しい。


 ワインドアップ健康法なるものをノボルは実践していた。野球で大きく振りかぶってとアナウンスされるあれだ。腕を高くあげることは簡易的で効果的な体操の最たるものである。肩の可動域も広げ、血流を良くする。万歳をすると爽快感があるのも、このためだ。サッカーは足を活かすために、腕の動きがものを言うスポーツなのだ。


「俺の調子のいい時は、振りかぶった足が逆手に当たるんだよ」

「それ、僕もです!」

「今日はよく当たるぜ!」






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