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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
王都武芸大会編

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84話 サマリード領への帰還 2

-シンタック 西門付近-


 翌朝、宿を出て西門まで来るとどうも外が慌ただしい。何が有った?


「ミランさん、周りの人に事情を聞いて貰えますか」


 小窓から指示をする。横窓からは多くの衛兵が集まっているのが見える。

 これは一旦停めて調べるべきか。揉め事に巻き込まれるのは御免だ。


「昨晩、この先の街道で賊の襲撃が有ったそうです。今は騎士が兵を連れて調査に赴いているとの事ですね」


 大会帰りの客が狙われたか。これは王家が黙っていまいな、面子も有るし討伐隊が出る流れだろう。そうなった場合、街道の通行が制限されるのは間違いない。帰還が大幅に遅れる事になりかねん。討伐隊の展開前に通過は・・・既に調査隊が出ている時点で厳しいだろうな。どちらにしろ、この様子ではこのまま通れまい。今後の判断も情報を得るまでは保留だな。


「一旦、少し離れた位置に停めて下さい。降りて直接話を聞く必要が有りそうです」


 小窓からミランに良さそうな場所を示して誘導する。この辺りでいいだろう。


「現状を確認してきます。タニアさんは一緒に来て下さい」


 馬車から降りて門に眼を向けると、丁度外に出ていた兵達が戻ってくるところだった。荷車で運んでいるのは遺体か。今回の被害者だろうな。街道に放っておくと疫病発生の元になる。回収して然るべく葬るのも彼ら兵士の仕事だ。散乱した瓦礫の撤去等も彼らがやっている。誰かがやらねばならんが、辛い役目だな。


 並んだ遺体の中に見覚えのある顔が有った。新人戦で俺と当たった女剣士だ。身体中に尋常じゃない数の傷が見える。俺と対峙した時は傷なんて無かった。かなりの人数差で囲まれたのだろう。大会出場クラスの奴らが力量で賊程度に劣るとは思えない。

 他の遺体にも護衛と思しき装具を纏った者達が居た。パッと見で十数名の護衛隊だったのが分かる。こんなのを襲撃するのは件の山賊共だろう。そこらの賊徒の仕業じゃない。

 最後尾の台車には子供の遺骸も有った。まだ10歳ぐらいの男の子。刃物で袈裟懸けに切られている。誤って当たったとかじゃない、殺意を感じる刃筋だ。

 隊列の最後尾には先日見た女騎士が居た。彼女が調査隊の長だな。名前は何と言ったかな・・・まぁ直接顔を見せれば質問ぐらいは出来るだろう。


 馬から降りて兵達に指示を飛ばす姿は結構様になっている。指揮官としては優秀みたいだな。近づいて声を掛ける。


「お疲れのところ申し訳有りません。何が起きたか教えていただけませんか」


「貴女は先日の。昨晩、山賊の襲撃が有った。準備が整い次第、大規模な山狩りが始まる。王命により我らも参加する。悪いが暫くの間、街道は使えないと思ってくれ」


 短節に答えると彼女はすぐに兵達の指揮に戻って行った。マズイ事になったな。


「どうするマリーナ。ここに居ても私らは邪魔になる。一旦離れよう」


 タニアに促されて馬車へと向かう。

 歩きながらどう動くかを考える。この後は山狩りが落ち着くまで足止めされるだろう。まずは戻って宿の確保だ。幸い金は潤沢に有る。逗留が長引いても問題は無い。


「ミランさん、昨日の宿まで戻って下さい。しばらく泊まる事になりそうです」


 馬車に乗り込み、移動の指示を出す。この場に留まっても仕方無い。タニアからの説明でメリッサとノーマは納得した様だ。ミランには後で説明しないとな。

 

「おや、嬢ちゃん達どうしたんだい」


 宿に戻って一通り状況を説明すると、同じ部屋を当てがってくれた。


「大変な事態になったもんだ。事情が事情だ。ウチは長逗留でも構わんよ」


 有難い事だ。これで当面は何とかなる。問題はこれからだ。数日で片が付くとは思えない。そんなに足止めされても困る。迂回する経路は有るのかも知れないがかなり遠回りになる。ここで待った方が賢明だな。とは言うものの、山賊討伐は何度もされているが成功した話は聞かないし、変に長引くことも有り得る。実際、あの山脈に巣食ってる山賊は相当な規模だと聞いているからなぁ。

 

「残念ながら、当分の間は出発出来そうに有りませんね。待つしかないでしょう」


「結構な兵数を投入している様に見えたね。今の時点で街道は封鎖されているはずさ」


「私らにはどうにも出来ないねぇ。行っても通してくれないだろうし」


「近づいたら追い返されるだろう。無駄に心証を悪くしても良い事はないな」


 部屋に戻って皆で話したが、結論は『終わるまで待つ』だった。まぁ、そうなるな。


 寝台に寝転んで考えを巡らせるが良い案は浮かばない。ここは実際に見に行くか。現状で動かせるのはアル達だけだ。周辺警備が薄くはなるが出歩かないので大丈夫だろう。


 アルとエクスに意識の大半を移して様子を窺う。討伐隊の規模は総勢400人ってところか。結構本格的だな。半数程度が隊列を組んで山頂方向へと向かっている。勢力としては充分なんだが兎に角侵攻が遅い。所々に有る罠に掛かってその度に遅れている。少しずつ怪我人も出始めていて、見ていて不安しかない。こんなので大丈夫なのかね。


 俺は忍者にして木々を渡って進む事にした。あの調子じゃ進捗は相当遅い。彼らを観察するだけ時間の無駄だ。

 罠が有るのは地表近くだけらしく、特に阻まれることも無く先へと進む事が出来た。しばらく進むと樹上に見張り台の様な物を見つけた。下側は巧妙に偽装されているが上方からは丸見えだ。この辺りからは山賊の領域らしい。

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