34話 移動手段を造る 4
-リベスタン城塞 車庫-
「これはまた・・・変った馬車になったねぇ。こんなの見たこと無いよ」
今日は馬車の実用試験だ。少し走らせて不具合が無いか調べる。
タニアは車庫に来るのは初。当然仕上がった馬車を見るのも初めてだ。製材所で原型は見ているが、こうなるとは予想しなかったらしい。
「何だか一回り大きくなった?アレがこうなるのねぇ。大したモンだわ」
メリッサはあまり驚いてはいない様だ。免疫が付いて来たというべきか。
「馬と繋いで下さい。済んだら動かしてみましょう」
あんな大きい馬は俺にはどうすることも出来ないので二人に任せる他ない。やり方はアモットが教えてくれたので問題無く出来るだろう。
「これで大丈夫かな。どっちも大人しくて助かったよ。イイ子達だね」
嫌がるかとも思ったがそんな様子も無く終わった。順調だな。
「では乗ってくれ。まずはロコナ村まで行ってみよう」
御者はタニアに任せる。俺はメリッサを連れて客車へ向かった。
「うわぁ・・・これ凄いね。マリーナが作ったの?王様の馬車みたい」
そういや、中を見せるのは初めてか。いいからまずは入れ。止まるんじゃない。
メリッサを押し込んで扉を閉める。奥に進んで連絡用の小窓を開ける。
「タニアさん、ゆっくりでお願いします」
「はいよ、ゆっくりね。出すよ」
少し馬車が揺らいだ。どうやら出発したようだ。
「へぇ・・・全然揺れないんだね?それにとっても静か」
低速だからな。それと普通の馬車と比べて、だな。
俺の場合は比較対象が悪いか。どうしても自動車と比べてしまう。タイヤが有れば相当な乗り味の改善が出来るんだがな。ゴムっぽいものが有るのかも分からん。
「この椅子も柔らかくて座り心地良いね。これなら長時間乗っててもいいかな」
まぁそこは拘ったところだからな。って早速横になって寛いでるな、こいつ。
「ふわぁ・・・気持ちいいなぁ。家の寝台より寝心地良いわぁ」
そうなのか。睡眠の質は重要だな。次はベッドの改良でも手掛けることにするか。
「くぅ・・・・・」
寝やがった。まぁいいか。今のところ軋むような音も無い様だし、上手く作れたと考えても良いだろう。もう少し速度を出すとどうなるかだな。
道路が整備されていればもっと快適になるはずだが、そこまでは俺には面倒見れないな。そこまで行けば領主の仕事の範疇だろう。国規模のインフラ整備に発展しかねない。
「メリッサさん、起きて下さい」
そろそろ村に着くはずだ。軽く体を叩く。気持ち良さそうな顔しやがって。
「う・・・・ん、うぁ?あ、ごめんなさい。あんまりにも気持ち良くてね」
さすがに申し訳なさそうな表情だ。別に俺は怒っているわけではないぞ?
「気に入ってくれて良かったです。感想は聞くまでもないようですね」
「何だか部屋ごと移動してるみたいな感じだね。とっても快適だわ」
実際、車を個室みたいに改造する奴らも居るからな。方向性としては似ている。
「今はゆっくり移動していますから。速度を上げるとそうでもないかも知れません」
速度だけじゃなく、道路状態にも依るからな。天候にも当然影響される。
「ふ~ん。馬車は酔うから好きじゃなかったけど、これなら乗りたいかなぁ」
お、停まったようだ。村に着いたらしい。
「村に到着ですか?」
小窓からタニアに話しかける。
「ああ、着いたよ。中から出ておいで」
外に出て停め方を教えないとだな。まずは扉の開け方も教えて見せる必要があるか。
「メリッサさん、降りましょう。まずは階段の出し方から教えますね」
ちなみに後ろには車体下部に格納出来る伸縮式の階段が付いている。
扉には業務用コンテナみたいなレバー型ノブで、閉めると上下をロックする構造を採用してある。開け方を教えておかないと簡単に壊されそうだ。
「運転してみての感想はどうでしたか?」
「御者用の座席が体にしっくりきていいよ。あれは操作し易いし、楽でいいな」
タニアはどうやら気に入ったらしい。特別製だからな。他には無いだろうよ。
「メリッサの方はどうだったのさ。後ろはどんな感じだい?」
「タニアも気に入ると思うよ。とっても快適なんだもの」
二人とも上機嫌だな。好評で何より。俺も不具合が出なくて一安心というところだ。
「では外で停める時の要領を教えますね」
停車時に使う脚の操作も教えておかないとな。これは城以外で馬を馬車から外す際にも使うことになる。宿に泊まる時には確実に使うものだ。
その後、御者を交代しつつ何度も城と村を往復した。途中から少しずつ速度を上げるようにしたが、特に不具合も出なかったので問題無く使えると判断して構わないだろう。
これで移動手段が手に入った。近日中にトリスタンまで行かないとな。




