33話 移動手段を造る 3
-自警団詰所 中庭-
アモットが馬を連れて到着したようだ。思ったよりも早かったな。
自警団に着くと、中庭で待っているとのことで、急いで向かう。
「マリーナ様のご希望通り、大きめの重種をご用意致しました。まずはご覧下さい」
目の前に5頭の馬が並んでいる。どれも大きい。城や自警団で使う馬とは二回りも体格が違う。これほどの差が品種で有るとは予想していなかった。
タニアに促されてゆっくりと見て回る。アモットが案内してくれるようだ。
「大人しいですね。どの馬も落ち着いている感じがします」
「農耕馬にも使われる品種ですから。速さよりも力を求める方向けですな」
確かにどの馬も力強い印象だ。速そうではないが鈍重な感じはしない。
「馬車を牽いたことの有る馬はいますか?」
「この中にはいませんな。大抵は中間種の馬が使われることが多いもので」
「そうですか。今回買わなかった馬はどちらに売りに行かれるのですか?」
「残りは中央都市の騎兵隊に話を持って行くつもりですよ。どれも重騎兵向きです」
なるほどね、軍事用でもあるのか。農耕馬って印象がしなかったのは納得だ。
一通り見て回った後、少し考えたいとその場を離れた。
「お二人はどれが良いと思いましたか?」
「アタシは重種の見立ては分からないよ。でもどれも上物なのは分かるね」
「私も同じかな。良い馬を選んで持って来てくれたんだと思うよ」
確かにどの馬も畑が似合う感じはしないな。希望に沿って集めてくれたってことか。
「後は好みで決めるといい。買うのはお嬢なんだからね」
「そうだね、気に入った馬でいいと思うよ。どれも良い馬だと思うし」
それもそうか。ここは素直に良い馬を紹介されたと考えよう。
「ではもう一度見て回って決めましょう」
結局、2番目と5番目の馬に決めた。どちらも青鹿毛だ。この二頭は俺と目が合っても視線を逸らさなかった。僅かな違いだが俺には気になったのだ。
「またご用件が有ればお声掛け下さい。今後ともご贔屓に願います」
アモットは上機嫌で帰って行った。二頭で金貨100枚。道具と鞍はサービスらしい。
「良い買い物だったんじゃないか?もっと高いかと思ったぞ」
「安くはないけどね。でも妥当な値段じゃない?こんな大きい馬なんだし」
用途で値段は変わるものだと思うんだがな。大きさじゃないだろ。
とは言え、これでやっと馬車が使えるようになるわけだ。少し楽しみだな。




