32話 移動手段を造る 2
-リベスタン城塞 車庫-
ここ一か月は車庫でずっと馬車の改造作業を続けている。日中は誰かしらの目が在るのでゆっくりと地味に作業し、殆どの進捗は夜間に忍者で進めている。
深夜なら見られる心配が低いので人型に拘らずに済む。腕が4つ有っても見えなければ何の問題も無い。思わぬところで役に立ったものだ。
結局は外観にも少し手を入れた。大型の駅馬車といった見た目に仕上がっている。違いは二階席が無いことと窓が少ないこと。窓が少ないのはここに在った馬車を素材にしたからだ。使われていたガラスの量が少なかったので仕方ない。
全体的な印象は現代で言うところのトレーラーハウスに似ている。大きさもだいたい同じぐらい。こっちの方が少し小さいかも知れん。
上部に天窓と採光窓が有るので中はそれほど暗い訳ではない。窓を閉めた時のために内側には壁面ランプが用意してある。客車車輪部の外側は覆いを後付けして保護した。
御者が位置する前部は独立した屋根と囲いを付けた。一人で操作する仕様なので専用の座席も設置してある。疲れないように特製のバケットシートだ。ベルトも有る。
前部は馬と一体化するので独立させ、客車とは下部構造で連結する仕組みにした。列車に似せた構造だが、強度に問題が有って角度はあまり取れなかった。
客車前部には駐車時の固定用にスライド式の脚を追加した。車で云うところの『サイドブレーキ』に当たる機能だ。
天井後部には前回作って余っていた連弩を増産して4基仕込んだ。追跡された時に使えるだろう。何事も準備は大切だ。用意と対策が有るに越したことは無い。
両開きの扉を開けて後部から乗り込む。出入口両端に片開きのコンテナ、奥に向かってコの字型に座席を配置した。床面には少し厚手の絨毯を敷いている。内壁と天井には壁紙の代わりに厚手の布を張った。塗料だと匂いが篭ってしまうからだ。
壁面と扉は予定通りに二重構造にして羊毛を硬めにして詰めてある。多少の火矢程度なら問題無く防げる。消音、防寒の効果もそこそこ有るだろう。
車輪自体には見えないように鉄板を仕込んで耐久性の強化をしている。
外側はつや出し黒を基調に金で縁取り、中央からやや下に太めのラインを引き、ラインに被せて【サマリード】と入れる。
内側は赤が基調の絨毯と座席(正確には赤茶色)にした。完全に俺の趣味だな。黒金の組み合わせは高級ハイヤーを意識したからだ。
高級感を出したかったんだが妙な既視感が有るのは何だろう・・・・・あ、色使いが現代の霊柩車そのものだからか・・・。まぁ、やってしまったものは仕方ない。今更変えるのも面倒だ。
後は馬だな。アモットが来れば全て揃う。それまでは余った材料で少しずつ弄ってみよう。残しても捨てるだけなのでもったいないからな。




