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白いふわふわな奴、召喚

犬(主役)、登場。

 白いフワフワの毛並み。

 つぶらな黒い瞳。

 口から覗いた赤い舌。

 知っている。この生き物を僕は知っている。前世で凄くよく見た。

 「……わー、ポメラニアンだー。かわいいなー」

 声が平坦になってしまった。

 そう、ポメラニアンだ。今世でこんなモフモフの犬は見たことないから、明らかに前世のポメラニアンだ。

 僕はガックリと地面に手をついて項垂れてしまった。

 犬、犬ね。確かにペットは家族って云ってたもんね。前世で自分がペットを飼っていたかは分からないけど、一般的に大事にされていたのは覚えているよ。人間よりお金かけられたりしてね。

 けど、何で危険な魔窟で犬なのさ。しかも小型犬。犬ならさ、他にもいるじゃない。強そうなのが。シェパードとかドーベルマンとか。

 ここはあれなの?素直に「力が欲しい」とか云うべきだったの?

 でも無等級アルトマスってなんか性能が微妙だから、力を望んだら右腕だけムキムキとかになるんでしょう?きっと。

 項垂れている僕の頬を、ポメラニアンがペロペロと舐めた。心配そうにクゥンと鳴いている。

 僕は力なく笑って、ポメラニアンの頭を撫でた。嬉しそうに尻尾を振っている。かわいい。

 しばらく撫でていると、少し落ち着いてきた。僕は籠からチーズとワインを取り出し、口にした。ポメラニアンにもチーズを分けると、ハグハグと美味しそうに食べる。うん、かわいい。

 ……とりあえず、ここから出よう。地上に戻るんだ。

 何だか力が湧いてきた。嬉しそうに僕を見上げるポメラニアンが目に入る。よしよし、お前を地上に連れて行ってやるからね。

「―――いって!」

 立ち上がろうとして、膝をついてしまった。

 まだ背中と足が痛い。ひどい打ち身なのだろう。早く行動したいけど、しばらく休息すべきか……。

「わん!」

 ポメラニアンが一声鳴いて、グルグルとその場で回る。うん、かわいいね。ポメラニアンは何をしてもかわいいなぁ。

「……あれ?」

 急にすっと痛みが引いた。

 ん?背中も足も痛くないぞ。立てる。立てるじゃないか!

「わん!」

 ポメラニアンがキラキラとした瞳で僕を見ている。

 え?君なの?治療してくれたの?もしかして魔法使えるの?

 尻尾をブンブン振っている。マジか。

 半信半疑ながら、僕はポメラニアンの頭を撫でた。

 とにかく、痛みは消えた。僕は籠の切れた紐を結び、担いで立ち上がる。

 さ、どちらへ行くべきか。右か左か。魔窟は円筒型だから、どちらへ行ってもいずれは別階層に向かう坂に辿り着くだろう。理論上は。しかし、魔窟だからなー。

「わん!」

 ポメラニアンが自信ありげに、左方向へ歩き出した。

 え?君分かるの?本当?信じるよ?

 僕はポメラニアンの後に続き、歩き出した。

 ポメラニアンのお尻が左右に揺れて、誠にかわいらしい。これだけで幸せな気分になる。

 こんなじめっとした暗い場所でなければ、楽しいお散歩だ。何となく、荷物も軽い。

 着いてきてる?と言わんばかりにたまにちょっと振り返る。その仕草もかわいい。くそう、アルトマスめ。いい仕事するじゃないか!

 急にポメラニアンが足を止めた。わん、と吠えて前足で壁をガリガリする。

 ん?何かあるの?ここ掘れワンワン?

 スコップとかはないから、小刀でポメラニアンがガリガリした場所を掘る。柄でガンガンと叩き、削れた場所に刃をいれる。

 「―――宝物!?」

 壁がベロっと剥がれた所に木箱が埋まっていた。本当にここ掘れワンワンじゃないか!

 得意げなポメラニアンの頭をワシワシ撫でた。何て賢い!

 木箱を開けると、綺麗な金属製の水筒だった。もしかして魔道具だろうか?中を確認すると、水が並々と入っていた。

 「凄いぞ、ポメ!水の魔道具だ!」

 ポメラニアンが、嬉し気にお尻をあげて、尻尾を振っている。これは助かる。水があれば料理もできるし、水分補給に困らない。

 僕は一口水を飲んだ。うん、冷えてとても澄んだ水だ。皿を取り出してポメラニアンにもやると、美味しいそうにペロペロと舐める。

 いい魔道具を手に入れた。地上に出て売ったら、かなりの額になるだろう。そのお金で家を借りて、ポメと一緒に住むのもいいな。

 僕は気分も足取りも軽くなって、先に歩き出したポメラニアンの後に続いた。

 体感3時間ほどだろうか。ポメラニアンが少し窪んだ場所にお座りした。僕を見上げて、尻尾を振る。

「ん?ここで止まるの?休息するんだね?」

「わん!」

 合っているらしい。

 そう言えば、お腹も空いてきた。僕はその辺の石積み上げて簡易的な炉にし、スープを作る事にした。

 先ほど拾った魔道具で鍋に水を入れ、豆と燻製肉を入れる。ネギは確か犬には良くないから入れないでおこう。

 豆を潰すと、スープはお粥の様になる。肉を多めにして、それをポメラニアンにやる。嬉しそうに尻尾をぶんぶん振って、ポメラニアンは器に顔を突っ込んだ。

 僕の分には割った堅パンを追加する。

「美味しいねー」

 身体が温まる。僕の言葉にポメラニアンは「わん」と返事をしてくれた。

 食後の干しリンゴも、一切れ差し出すとポメラニアンは喜んで食べた。

 人でも犬でも、一緒に食事をするのは随分久しぶりかもしれない。

 食器を片付けたら、明日に備えて直ぐに横になる。マントの中にポメラニアンが潜り込んできたので、腕に抱き締める。

 暖かくてフワフワして、僕は気持ちよく眠りに落ちた。

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