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生け簀の国のジン   ド田舎に生まれたら、お嬢様系幼馴染が攻撃力も防御力も高い上にボス耐性まであるんだが  作者: 長月未至


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職場の風景 (4)

冷たい風が吹き付ける。周りには針みたいな葉っぱ。松に似た木だ。探せば茸でも見つかりそう。まだ食べる季節でもないか。それに遠くから重たい甘い香りが流れてくる。どこかで実が成っているんだろう。

ちょっとした遠足みたいだ。振り返れれば、青々と茂る森。その向こうには一面の平地。電気通ってるわけじゃないから真っ黒だな。小高いところにある村だってそう。一々油燃やしてられねーからな。周りは畑。麦じゃない。野菜か果物か。村と、その向こうを繋ぐ道を、光る豆粒の群れが夜な夜な歩いている。あいつらは何しに歩いてるのか。

普通だったら、もっと虫や鳥が鳴き、夜動く畜生どもが這い回る頃だ。でも俺達がいるからな。石の裏の虫みたいに、ねぐらで縮こまってる。

獣と、そうじゃない奴が踏みしめて出来た道を、ゆるりと登っている。足を動かせば、背負いものの中身がたぷりと揺れる。水とは違う。波打つ感触は、とろりとろりと少し粘ついている。あまり変な香りはしない。何から絞ったんだろう?









藍色の空には星が煌めいている。月の無いからいっそう輝く。昼間うっすら見えるのとは段違いだ。醒めた青い空にビカビカ光ってるお日様。その近くにうっすらあったところでな。

赤い星、黄色い星、青い星、大きい星、小さい星。たくさんの綺麗な星。1つとして同じ命は無い。それぞれ個性があるって、手垢のついたこと言いたくなる。数が多くちゃ似たような奴ら区別してらんないけど。


「さそりに殺されて、星座になった男がいるんだと。」

「どんな形してるの?」


いつか星を見る時に覚えたな。それっぽいからやったけどさ。それでどれだけ意味があったのか、未だに分からないや。


「そうだな、あの赤い星と、その下あるだろ、右とそっから先のを結んで」


しかし喋る度に、仮面がうっとうしくて仕方ない。俺もいつだかの奴と同じ格好している。夜を模した外套に仮面。今も羽織るのか、と思ったが。

違いはある。仮面の彫り物がな。俺のは、星のない単なる空だ。星と空ってどっちが強い?  ちょっと光ってるだけの点より真っ黒で広い面というか土台の方が強い気がするんだが。


「ふうん、それで人なの?」

「連中が言うにはな。」

「でもいいわね。いつまでも空にあって。」

「そうか。」




「星の光って、地に届くまで随分とかかるのでしょう?」


そういう理系っぽいことべらべら喋った人間が昔いたんだな。飽きる程勉強した奴が、こんなファンタジーなとこに生まれてどう思うのか?  話しが合わなくて寂しい?  もっとみんなの生活をよくしたい?  MPの仕様を理解したい?  


「だってな。俺もなんかで聞いたことあるくらいだけど。」


象だの巨人だのが大地を支えているなら、話は別かもしれないが。


「もしかしたら、今この瞬間あの星が砕けていたら」


適当な、青い星を奴が指差す。


「分かるのは数百年だか、数千年だか、もっと先かもな。」

「その時も、今日と同じように私達は空を見上げるのよ。」


そういう規模なんだ。俺っていつ寿命くるの?




















ゴツゴツした岩の壁が、向こうの暗がりまで続く。青い染みがあって、見ると人の形をしている。絵だ。

角のある、4つ足の動物と人が相撲みたいに1対1で組み合っている。この角付き、昼間のと似ているとすると、普通の人間よりは強そうだな。経験値もたっぷりと持ってそう。

その隣には儀式かな。内臓かなんか、血の流れる丸いものを高く掲げて 山の前に捧げている。

なんだか博物館みたいだ。催しものであるよな、無駄に混んでるやつ。もっとゆっくり見させてくれっていつも思う。

緑色の、草原の上で家々が人を囲っている。家族がいくつも、子どもが駆け回って、男達は狩猟して、女達が炊事している。普通の光景だな。











洞窟の1番奥には、草で編まれた布が1枚敷かれている。換気できなさそうだから、動物の脂と汗が混じった酷い臭いがするものと思ったが、そうでもない。むしろ爽やかなで芳しい香りがする。花が置いてあるから、これのせいだ。文明的だな。床には使いこまれた木刀がある。子どもがいるのかな。親父と打ち合って修行しているんだろう。敵が来たら家族を守れるように。










剣があっさりと首を刎ねる。ゴロッと放られ、石っころみたいに地面に転がって。細い顎、土に汚れた灰色の皮膚、皺だらけの顔。どこを見るともなく、ただ目ん玉開いている。

ターミネーターが人に会うって言ったらこういうことだよな。

奥にはこいつの家族か、小さいのが3匹、大きいのが1匹。オークってところか、山に籠って隠れ潜んでたわけだ。

命乞いだか懺悔だか知らないが、大きい1匹はこっち向いてギャーギャー鳴いて。小さいのは小さいの同士でギャーギャー鳴いている。意味は聞き取れない。が、聞いても楽しくはないだろう。

透明な剣が煌めく。





残骸に油をかけてやる。 俺がやったところで悪い冗談だな。




















黒い煙が勢いよく入り口から吐き出される。1条、2条と立ち昇って、空まで。こいつらも星座になるのか。



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