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生け簀の国のジン   ド田舎に生まれたら、お嬢様系幼馴染が攻撃力も防御力も高い上にボス耐性まであるんだが  作者: 長月未至


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職場の風景 (2)

ぶっとい脚が奴の肩から生えている。いや鷹が止まっているだけだが。薄い肩に食いこむ爪も立派だ。ほどよく丸いから手入れされているのか。態々運ばされるだけはある。


「手紙にはなんて?」

「仕事。あなたも来なさい。」

「了解。」


干し肉をかざしてやると、大きく––奴が小さいからか、テントが狭いからか余計にそう見える––翼を広げてこっちをやってくる。

腕を差し出すと

飛び乗って

顔つっついてきやがる。

元気だな。


「どこへ?」

「北の果て。」


肉を近づけると

素直に啄み始める。

ちょんと千切って

飲みこんで。


「時間かかる?」

「いいえ、一晩で済むそうよ。」


裏技でいくのか。1面から2面に切り替わるみたいなアレ。一応休むって言った方がいいか。


「何するって?」

「人に会いにいくだけよ。」


せいぜい楽しい遠足になるといいな。








青い花があって、その花びらをすり潰す。それから油とか、白い結晶だがと混ぜて何ができるかというと

爪に塗るアレだ。

筆が桜色の爪を塗り変えていく。この色がお気に入りで、こっちに来てから何回も作っている。青に、緑と赤少しを足して。どっかで拾ってきた石を砕いて作ったももを混ぜ、ラメっぽくしている。


「どうかしら?」


お手々の先には夜空。火が揺らめく度に星が煌めく。


「良い色だな。」


爪に色塗って、なにが楽しいのかブランドもので固めるってなら分かるんだが。


「あなたにも塗ってあげる。どんな色がお好み?」



「お前と一緒でいい。」

「うふ、いいわ。」


大人しく差し出した子供っぽい手に、子共の手が重ね合わさる。


「そうだ、お化粧もしましょう。」

「……好きにしてくれ。」


化粧ごっこか、ままごととしては本格的? いやお人形遊びだな。




にこにこしながら、お化粧セットを取り出してきやがって。

紅い唇を吊り上げながら身を乗り出す。間近に見ると真っ白な肌だ。ニフラムとかターンアンデッドとか効きそうなぐらい。でも温かいからな。


「くすぐったい?」

「いいから。」


細かい筆先が好きに動く。








「かわいいわね。」



鏡を見せられると

なよなよとしたガキが、ぶすっとした表情を浮かべて、頬を薄くはたかれたり、口紅塗ったりと好き勝手されたのを受け止めている。お稚児さん扱いが不満みたいだな。












藍色の爪先の、細い指が駒を前へ、1マス進める。歩だな。駒9つ、合わせて18抜いて、今度は将棋としてやってる。将棋なんてガキの頃やったきりだが。付き合いで指す機会なんてなかったしな。

反対側から、藍色が盤上を動く。俺も同じ色してるな。駒を置けば

軽い木の音がパチンと鳴る。ちゃちな玩具と違って、重みのある。本物だ。プラスチックの玩具なんてこっちで見たことないけど。

玉は金で囲うと強いんだっけか。あとは、銀を突撃させる戦法が強いんだよな。

歩を前へ進める。いけ、雑兵ども。






向こうが1つ前へ。そうすると

歩が取られる。ああ、お前にも帰るところがあっただろうに。

返しに銀で取ってやる。仇は取ったぞ。


「取ったら、手元に置くんだ。」

「これでやっと打てるのね。」

「ああ。」


こっちのゲームは、始める時に好きな駒を選んで、そこから張るらしい。


「置くってことは、捕虜にしてるの?」

「多分な。殺さないで済むなら、その方がいいだろ。」

「ふうん。」


そっから戦わせるんだから、余計酷いか?





飛車を突っこませて

龍の出来上がり。


「成るだけなのに、手間のかかること。」

「倒すだけじゃ簡単すぎる。」

「そこまでしても、1回だけでしょう?」

「そうさ、それが普通なんだよ。」


こっちのルールだと相手の駒を取るとレベルが上がる、つまり成るわけだ。上限は無し。7回成ると、3回行動の上、どこでもテレポートしてくる。無茶苦茶だ。おまけに共食いあり、だから手持ちをひたすら食わせるか、突撃させるかとかいう血みどろの絵面が展開される。


「もう現実でしよう。あなたにとっても。」

「そうだな。」



パチリ

パチリ、と鳴り続ける。













パジャマの女の子がぺたりと、絨毯の上に女の子座りしている。姿見の前ですっかり落ち着いていて。野郎に髪を任せているのに。

櫛を通すと素直に通る。それを腰の方まで。

さらさらと真っ直ぐ流れる。素直な髪だ。髪ってもっと強いもんじゃないかったのか。

櫛はこの前買ったのを早速使っている。持ち手には、蔦と、零れ落ちる朝露が細工されている。この雫は髪に塗ると髪に良くて、この櫛もそれと同じくらい髪に潤いを与える、って露天のおっちゃんがペラペラ喋ってたな。




仕上げに油だ。壺に入っているのを手に馴染ませる。もったりとした油から、芳しい香りが立ち昇る。人肌に馴染ませてから


「ん。」


一筋ずつ纏わせる。














気だるい感じが全身に包む。随分と慣れ親しんだ感覚だ。真夜中なのが特に。

献血だってのに。抜かれてるの、血だけじゃないよな。モツ抜かれたってそのうち生えてくんだから、血なんて。 どうせMPを吸ってるんだろうけどさ、ふしぎなおどりみたいに。

奴が全力で戦闘して、MP切れたら俺を吸ってまた戦闘へ、みたいなのが正規の運用じゃないのか?  つまり俺は生きたエーテルってわけだ。いったい何と戦うことになったらそれが必要になるのかはわからないが。ドラゴン?  デーモン?  

このゲームのストーリーはどうなっているんだろう。前半はよくあるパターン、ダンジョンでバトル、おつかいを繰り返して。中盤、戦争に巻き込まれ、人間同士で無駄に殺し合って。そっから黒幕いるのが発覚、ラスボス倒して、人々に平和が戻りました。めでたしめでたし、ってな具合か。こうシステムは変にリアル拗らせてそう。無駄にきついバランスに、レベル上げも苦行。強くなったらなったらであっさり勝てて拍子抜け。

なにはともあれ主人公が最後にどうにかしてくれるだろう。だから俺は















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