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生け簀の国のジン   転生したら幼馴染にボス耐性があったんだが  作者: 長月未至


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職場の風景(1)

傷だらけの野郎どもが飯を取ろうと、お利口に並んでいる。思わず唇が釣り上がってしまいそうだ。

見た感じこれにも順番がある。弱そうな奴が後。2番目に強そうな奴が一番最初だった。でも先頭の奴はそれを食べるわけじゃない。汁の1つも万一零さないように慎重な、でもおつかいに慣れた足運びで。1番強そうなおっちゃんのところへ。強い奴は偉い奴。群れには群れの決まりごとがあるわけだな。

だが群れがあるってことは、そこから逸れる奴がいる。つまりどんな奴かというと


「……。」「……。」「……。」「……。」「……。」


こいつらが横目にチラチラと、なんでこんな奴が一緒にと、よそ者を見る目だ。実際こっちはまさしくalienだからな。とはいえいつものことだ。居心地の悪さなんてとうに慣れたさ。  いつからなんて忘れたけど。

いつもの目線に身を躍らす。コツコツと、自信たっぷりの足音を響かせる。まるで俺が主人公みたいに。

お上品に取り皿を手に。そこには何載せようか?  肉を山盛り?  いつだってそれは夢だよな。すべてバランスよく?  ここの葉ものの処理は意外に気が効いている。びしゃびしゃでもないし、でろでろでもない。ちゃんとシャキシャキしてて、揚げかす加えたりハーブ混ぜたりと、一手間かかっている。

この後が控えているから、控えめに、肉が二掴み、菜っ葉ひと掴みぐらいで。スープ鍋には、うねうねした肉の欠片が浮いている。ホルモンか。余すところなく利用するってわけね。これは碗1杯。

この肉の山、いつだかの言いぶりだと、これだって森から取れた奴だろう。戦うところならどこも同じことやってるものなのか。俺も。奴も。











日の光が東から窓を射抜く。うっすら白く染められた部屋には、真面目な顔した大人が、地図を囲んでる。そこには、ここら辺一帯の地形やら植生やらが書きこまれている。小さな池の近くには、赤い木の実、ちょっとした山にはギザギザした葉っぱ。


「確認されたのは」


知らない女の白い手がピンを掴む。その上にはデフォルメされた動物。誰が作ったのか、うまいこと形になっていてかわいらしい。あんよがちっちゃくて、円らな瞳が上目遣い。


「鹿が1つ、犀が2つ。」


群れね、家族だろうか、この前みたいな寄合だろうか。身を寄せあい、一緒に狩りをしたり餌を分けあったり、今日までたっぷり経験を貯めたに違いない。


「ふむ。」


ジンが最もらしく頷いて、次の発言を違う人間に促す。これまた見たことない爺さんだ


「バルファイが一山越えそうだ。」


山、レベルが上がりそうなのか。

そういや誰が何を何匹倒して、ステータスがどれくらいか記録しているとか。キャラシみたいだよな。それで定量化だか、レベルの視覚化を目指しているんだと。


「ドルミにはそろそろ複雑な群れを相手にしてもいいだろう。」


複雑、単純な群れは普通の群れか。逆にすると違う種類のモンスターの群れ、寄合だな。


「いいわ。ドルミは犀を、バルファイは鹿を狩りなさい。外には勢子を。」

「そうしよう。」


紙っぺら見もしないで言ったんだから、ちゃんと頭に入ってるんだろう。


「後ろに控えるのは私でいいのか?」

「それは」


そこで俺を見てくる。
















コンロの中に積みあがっている薪は、これから火をつけられるのを待っている。その手前で、か細い爪が地面にめりこむ。

丸々と太った鳥が暢気にひょこひょこと歩いている。膨らんだ胸からむっちり垂れた腹まで肉のついた腿、まあるい曲線を描く。麦に葉っぱ、たくさんエサを食ってるんだろうなと思わせる。実にうまそうだ。ここに連れて来たということは、あいつ、今日の昼飯か。それを知ってか知らずか、地面を啄いている。

空いている荷車が向こうに。ここは安全地帯つーかセーブポイントか。狩場と拠点の中継地点だ。捌く獲物の持ち帰りもまとめてやるっぽい。効率的だ

暇そうにしている人間が何人か。だいたい一段落ついたのか。一方俺は案山子やっている。


「見ない顔だね、にいさん。」


おばちゃんが話しかけてくる。どこもこういうのは一緒だな。


「そうだな、最近社長に拾われてね。」

「あんたもかい。」

「他にもいるのか?」

「いるさ、大勢ね。あそこにいるのだって」


無遠慮に指差すのが、若いあんちゃんだ。とりあえず、曖昧に笑っててくる。良い奴だな


「頼れる人だ。」

「全くだよ。おかげでなんんにも救われたんだ。この上、もっと救おうって意気込んでいるんだよ。」

「すごいな。」

「そうさ、だからさ立派なもん持ってるんだから。」


腰に下げた剣に目線をやってくる。


「にいさんも助かてやっておくれよ。」

「任せてくれ。」













「あんたに仕事だ。」


髭のおっちゃんがむっつりそう言ってくる。いつだか見た面だ。


「待ってたぜ。」














日を遮る枝葉の下、むっつり、男と2人連れ。


「血の匂いに誘われた虎が、やってくる。」

「まだ来てない?」

「これからだ。このままだと若いのが喰らいつかれる。」

「あんたより強いのか?」

「……サシだときつい。」








「予測だと、そろそろだ。」


かさかさと音が

少しずつ、大きくなっている。

湿り気のある音じゃない。枝の軽くしなる音、猿みたいに枝の上を飛び乗ってるな。









「おっちゃん、もう少し前に行きな。」


俺は、もっと下がって


「俺を囮に?

「倒せばいいんだろう。」

「そんなことする」


この辺りだな。


手に持った石ころを

ぴんと飛ばして


ぴゅっと穴が空く。

おかわりはいるのか。

いないな。


木の上から虎が落ちてくる。これから襲うってところだったのか、おっちゃんのすぐ近くに。


「あんた」


俺に経験値入らないで


「いつだか悪かったな。詫びだ。」


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