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生け簀の国のジン   転生したら幼馴染にボス耐性があったんだが  作者: 長月未至


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12/14

夜の一狩り

帰ってくるなり、ととと、と小走りでやってくる女の子。笑顔浮かべながら、上体どころか長い髪の先も揺らさずやってくる。


「おかえりなさい。」

「ただいま。」


いまいち据わりが悪い言葉。こっちの舌回しはとっくの昔に慣れたのにな。


「さあ、いきましょう。」


すっと手を取られてどこかへ、歩み出す。いくら温かい手が小さいからってそとても逆らおうとは、ならない。だから引かれるまま一緒に歩く。ふわりと香る甘い香り。白くて、かわいらしい花が頭の中を過ぎる。


「なにしに?」

「決まっているわ。」


すっと耳元に口を寄せて


「レベル上げ。」


楽しそうな声色。何度だって見て、聞いて、やった言葉が聞こえる。













「頑張りなさい。」


釣り出されたモンスターが目の前に。

ぶっとい4本の足が、がっしり地面を掴んでいる。月夜に馴染む茶色い甲冑。そこには一つも傷が残っていない。森の中で生きているやつってのは、凹みやら傷跡やらが残っているもんだが、こいつに無い。つまり


(でんじは)


効いてない。塩試合確定だ。

そいつの両手は剣みたいになっている。右手は足から腰ぐらいまでの長さ。途中から短い鎌が伸びている。もう片手はその半分。人間が二刀流やるみたいな格好だ。でかい眼球に浮かぶ円らな瞳がこっちを見つめている。俺より頭2つ分でかいカマキリだ。


ええい、だるまにしてやる。

右側に一気に近寄り

叩けば

硬い。向こうは小揺るぎもしていない。

カマキリが腰を回して、長い方が返しに斬り払

う。

胴を反らす。

羽根が広がる。薄くて、月明かりで向こうの、茂みが透けて

どっとデカい図体がぶつけられ

重たい波が身体に広がる。タックルされたのか。

向こうは羽を器用に使ってその場で留まる。距離を取ったわけだ。

今のでMPが3ぐらい持ってかれた。


4本の脚が前へ前へと蠢き、

長剣を振り上げ

斬り落とし、速い、半歩避ける。

突き、剣でふんわり反らす。

顎が迫る?口の中には大きな牙が生えていて、身を翻し

首へ剣を叩きつけ

後ろへ下がる。


もう一度こっちから。

左側、短い剣、盾みたいに構えているそこへ。背後を取れるか?

長剣が迫り、おまけに脚を蠢かして正面を維持される。

後ろに

突きが、ステップで避ける。


頭、右手、左手、タックルと、攻め手豊富だな。向こうの攻撃力、防御、どっちも俺には有効だな。それを無駄打ちさせて、ガス欠にさせるのが手堅い。俺の最大MPは高いから、MP消費レースに持ち込めば勝てる。相手の攻撃を最低限の消費で対処して、合い間に攻撃さえすればいい。



またでかい図体が迫る。

斬り払い、くぐって向こう? タックルは痛いな。受け止め

左手から突き、上から牙、剣を手前に滑らせて避ける。


俺は内側に入りたくない。向こうは後ろを取られたくない。でも、お互いダメージを与えたい。


お互い近づき

右へ、斬り払いが来る、左の短剣が押し出してきて

長剣を叩いて

タックルを食らう。




近づいて、

叩いて

避けて

離れる


近づき

叩かれ

突かれ

離れて



近づき






































MPが3割使った、向こうはどうかな?  しこたま殴っても、始めと様子が変わらないが。

カマキリがブオンと一気に、近づいて


斬り払い、避けて

突き、反らして

タックル、横に飛び

斬り払い 斬り下ろし 斬り払い

避けて  避けて   避けて 


一気にテンポを上げてきたな。


斬り払い

長剣を外側から抑えると

鎌に引っ掛けられて、くるり

落とされる、剣が。

マジかよ。拾おうにも

長剣が迫る。

そのまま振り下ろされれば、血まみれ確定のそれが

目の前に

半歩横にずれて

突き出される剣を、見下ろし

脇に抱えこんで、肘を逆に捻ってやる。

関節技は継続ダメージを与えられるが、あっさり腕が切り離されて、追撃が来るのを転がって避ける。


こっちは剣を拾って、向こうはあっさり腕をくっつける。これでイーブンだ。


突っこんできて


飽きずに斬り下ろ、合わせように剣を

途端にゆっくり、フェイント?

右羽根を動かして、短剣が抱えるように、頭が落ちて、

手首ぐらいくれてやる。左手を口の中に突っ込んでやって、口の中は狭いからそれでいっぱいに。骨すら噛み砕かれるが、長剣を上から被せて抜け出す。








MP4割消費。俺はやり過ごしたが、随分激しく動いてた向こうはどうかな?


(でんじは)


長剣がだらしなく下がる。

それでも近づいてくる。

ふーん頑張るね。

振り下ろしてきた短剣を弾き飛ばし

振り向きざまに

脚を砕く。

もう一本

立てなくなって、崩れる。

なに考えているのか分から目ん玉が、無力に、夜空を見上げている。そこには真っ暗闇が広がっていて。

首に、剣を差しこめば、あっさりと地面に届く。ポロリと転がる頭。

終わっt


2、4、6


いつの間にか、カマキリの群れが周りを


「お疲れ様。よくできたたわ。」


奴は軽く踏み込んで、なにも反応できないまま、虫けらどもがこれまた首が落とされていく。











パチパチと、油が落ちて弾ける。炎がオレンジ色の明かりを辺りに投げかけている。パンを食いながら、焚き火の揺らめきを眺める。

さくりと音を立てて破ける皮。中はみっちりと詰まっていて。小麦の香りが口いっぱい。

火の周りに串が刺さっていて、奴がじいっど焼き加減を見極めている。


満足いったのか手に取り

クルクルと確かめて


「いいわよ。」


じわじわと油が泡となって肉の表面を跳ね、香ばしい匂いが鼻を擽る。

受け取って、早速

じわりと熱を放つそこへ

かぶりつく。

白身からは、エビとかカニとかと同じ香りがする。繊維を噛みければじわっど肉汁と一緒にガツンとした旨みが広がる。


「おかわり、あるから。たくさん食べて。」










白い煙がゆったり甘ったるい香りを運ぶ。霞む青地の天井には刺繍がされている。中心には黄色いまんまる、月だ。その周りに、円状に図が置かれている。始めに大地と、蒔かれた種。次に芽吹きと赤い、水かな。ついで、麦穂がたわわに実っている。最後に台の上に麦、それを人に捧げている。

一際暗くなっているところが、ちょこまか天井を動き

ちびっちゃい女が、俺の上を四つん這いになって上に。楽しそうに見下ろしてくる。そこには何の疑問も無く。

なんとはなしに顔を撫で始める。その手は柔らかくて、温かい。

顎を伝い

爪先が首筋を穿る。これからするのと同じように。

身体がぴったりと重なって


「……ああ」


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