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生け簀の国のジン   転生したら幼馴染にボス耐性があったんだが  作者: 長月未至


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11/14

雑魚戦

革鎧にブーツ、外套と余さず身を守っているねえちゃんが目の前に。そんな固めていても傷跡がいくつか残っている。向こう傷だからかっこいいって言うべきだな。

俺とか奴とか強いやつは傷が残らない。奴はノーダメ縛りかもしれんが、俺なんてしょっちゅうバラバラにされている。それでも残らない。もしかしたらMPがたくさんあるやつは傷が無くなるってのが正しいかも。

だから、この女のステータスを考えるなら


HP    80


MP    俺より少ない





ちから   D

すばやさ  D



こんなか。

補正の数字はみんな同じなのか?  今のところ

奴>俺>こいつら

って感じだ。馬力はまちまち、個人差か種族差か?        もっと場数を踏めば分かるだろう。

レベルも上がれば最大MPだけじゃなくて、補正が上がるのか、これも調べないと。俺がレベルを上げるにはどれくらい必要なのか分からないけれど。



「あなたには、鹿と、その群れを倒してもらう。」

「これで」


剣を軽く叩く


「ぶっ殺せばいいんだろ?」

「ええ。」

「お安いご用だ。それでこの先に?」


獣道の向こう、森の中を指さす。


「そう、仲間が誘導している。これから案内する。」

「そいつはあんたらにとっても強いのか?」

「いつもと同じだとしたら、つまり4人で相手するとなると、手間取る。」


引いた方がいいのか、足した方がいいのか、分からない。強い方がありがたいね。


「それを俺一人で?」

「十分という見立て、あなたならできる。違う?」

「そいつは間違ってない。」


1匹ならどうとでもなる。相手は攻撃を余裕で避けてびっくりさせてもいいし、ばたばた走ってヤッちまってもいい。

多数はパズルだ。順序よく捌けばいい。それをする時間も能力も十分にある。

同格だと、面倒だな。攻撃通すか通さないか肉を切るか切らせるか、駆け引きがMP切れるまでひたすら続く。焦れた方が負けるってのは分かるが。


「狩って、その場でバラすのか?」

「場合による、小さいならそうなる。でも今日のは、大きいから持ち帰る必要がある。」


大の大人が血まみれの中で、黙々と解体する。それは普通のことだな。


「こっちから質問、いい?」

「いいぜ、答えられることなら。」


なにか隠すようには指示されてない。分かる奴には分かるように振る舞えとは言われた。公言しないけど、隠しもしないっていう塩梅。いったい誰にプレッシャーをかけているのか。それとも釣りなのか?  俺が餌なのは間違いなさそうだ。


「どうすれば強くなれる?」

「お前も悪魔と契約すればいい。お代は魂だけ。」


噛みつかれれば契約完了さ


「不躾だった。」

「……殺せばいいだろう。」

「あなたほど強ければ簡単。でも私達はそうではない。だから弱い獣を仲間と倒して、少しずつ?強くなるしかない。」


弱いやつが這いつくばっている間、強いやつはもっと強くなって、あいつも今頃もっと強くなってるのか。


「そうだ、他に注文は?」

「手早く仕留めて、1撃で。」


いつもやってる最低限の動作、最低限のMP消費で仕留めろってやつね。


「お安い御用だが、そいつはいったいどうした理由で?」

「その方が品質が高くなる。」

「時間をかけると?」

「鎧に適さず、売れない。」


MPが死んでも多少残って、それで補正も続く、ってところか。











「じゃ、頼んだ。」

「あいよ。」





剣を担ぎながら、向こうを見遣ると、薄ら暗い木の下に獣どもが勢ぞろい。猪、2匹の犬っころに、蜘蛛が仲良くこっちに挑みかかってくるみたいだ。よっぽどけしかけられているのか?  おまけに木の影からちょこまかと様子を伺う奴に、向こうにでかいのまで。そいつが本命かな? 


猪が焦れて、突撃してくる。これがホントの猪武者だな。

焦げ茶色の毛を後ろに流しながら、円らな瞳が真っ直ぐ射抜いて。他の奴らも、もう走り出す

とすると

足元に来る獣の真横に、盾にするように近く

剣を振り下ろし

首を叩き落とす。

残った勢いで、胴体が走ってゆく。

次は犬っころが纏わつこうと1匹飛びかかり、もう1匹が回りこむ。足に噛みつくつもりだな。囮になってでも1撃与えようって?  健気だね。

なら

2歩左に、剣を地べた這うように動かし

ドタマにぶ

くっせえな、ガスだか粉だかモロに、目が開けられん。

それでも走って来る位置に剣先を置いて

骨、顎を砕いて  木の葉が揺れる。

剣を振り上げ

飛び上がっている奴を吹き飛ばす。上から落ちてくる猿

片手を上げ

握り潰

風斬り音が鼓膜をつんざく。


毛玉をぶん投げてきやがった。俺どころか辺りもどろどろ。ちょうど万歳してるみたいで、間抜けも極まったな。にしても、飛び道具こういう使い方をするのか。    これは後で叱られるな。






最後に残った虫けらを


でかい脚が潰す。

鹿さん、ようやくのお出ましだ。

胴体だけでも俺より背が高い。前脚は象よりぶっとくて、うねうねくるくるした毛で覆われている。頭には立派な角、ユニコーンみたいだ。

俺と戦うのは割に合うのか? 逃げられないのか。


そいつが間合いを詰めて来る。視界いっぱいに、毛艶の良い身体が迫って

蹴ろうと足を振るい

蹄が前に。  首の下へ潜り

剣を薙ぎ

毛が滑って抵抗するがぬるりと食い破りその向こうへ。

ばたりと崩れ落ちる。

雑魚の方が数が多い分面倒だったな。











「今回は上手くやってくれたみたいね。」

「雑魚相手なら、あんなもんさ。」

「頼もしいこと。」


また、デスク越しにジンに報告だ。

向こうで、紙っぺらを斜め読みして、満足そうに頷く。


「今回で、あんたの運用方針がおよそ固まった。」

「そりゃ重畳、聞かせてもらっても、ボス?」

「私の下で予備戦力として扱う。」

「切り札ってところか。」

「そうね。」

「へえ。」

「あんたは強い、でもあんたに頼り切りだと全体の練度も上げられなくなる。」

「全うだな。」

「でも、その強さがあれば、限りなくリスクを抑えるられる。それどころか、更なる成長も可能となる。」

「具体的には?」

「危険な獣には、あんたをぶつける。」

「上手く使ってもらえるようで安心したよ。」


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