922 【最後の理由】──希望を抱いて渦に消えた愛
学園の校庭に、くまのぬいぐるみのような姿をしたアストラストの本体が降り立つ。
「これで終わりだと思うなよ。貴様らも道連れにしてやるぞ」
小さな手には、巨神の消滅核が握られていた。
カウントダウンが始まり、圧倒的な終焉の力が周囲にうねる。
シルヴァーナがロウィンに問いかけた。
「とてつもないエネルギーよ……どうする?」
ロウィンは決意を込めた眼差しで応じた。
「アイルが手本を見せただろ?
チートに頼らず、強引に未来を掴む!
行くぞ、シルヴァーナ!」
青白い障壁がロウィンの周囲に展開され、消滅核の暴走を食い止める。
「くっ……じきに臨界点が来るぞ!」
アストラストは歪んだ笑い声を響かせる。
「あひゃはは、死ねばいいんだ!」
刹那、リチャードが剣を振り、その首を刎ねた。
中枢を断たれたアストラストの意識は完全に途絶える。
消滅核はロウィンの手で素早く回収され、シルヴァーナが緊急転送魔法を起動。
二人はまばゆい光に包まれ、校庭から姿を消した。
リチャードの頬を一筋の熱い涙が伝う。
倒れたままのルミナ、孔明、関羽、張飛は、その別離の光を瞳に焼き付けた。
*
時空大渦が激しくねじれながら広がる領域。
二人は転送光から現れた。
ロウィンは消滅核を抱え、シルヴァーナに告げる。
「なんとか間に合いそうだな……。
みんなの所に戻れ。俺は一人で行く」
シルヴァーナはその胸倉を掴む。
「どうして? ずっと一緒だって約束したじゃない!」
ロウィンは彼女の手に自らの手を重ねた。
「全銀河にはまだ希望が残っている。
俺の使命は、希望を失わない世界線を作ることだ。
そして、シルヴァーナの笑顔こそ、この時空大渦に飛び込む最後の理由だ」
二人は深く頷き合い、わずかな時間、互いの手のぬくもりを強く確認した。
シルヴァーナは名残惜しそうに、しかし強くロウィンを突き放した。
「……必ず、無事に帰ってきて」
その言葉を合図に、ロウィンは消滅核を抱いたまま、青い閃光となり、時空大渦の核へと単独で飛び込む。
シルヴァーナも最後の転送光に包まれ、仲間たちの元へと戻った。
全銀河を襲っていた激しい揺れは、やがて収まり、宇宙には不思議な静けさが広がった。
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