918 【絶望】法則上書き──英傑と魔神が“存在ごと”消される時
黄金の巨体から発せられる「ノイズ」の光は、原初の神アストラストの表情を激しく歪ませていた。
「……確率操作ごときで、この我が……!」
その焦燥は殺意に転じる。
アストラストは、地面に輝く巨大な八卦の紋様と、それによって呼び出された黒い雨雲を見据えた。
「戯言を。確率とは、数の遊びに過ぎぬ!」
アストラストが天へ向かって咆哮した。
それは物理的な音ではなく、全宇宙の言語を一瞬で停止させるかのような、絶対的な沈黙として戦場を圧した。
黄金の瞳から、光が消える。
「書き換え規程・法則の優越──第二律・天変地異の書式を、無効なバグとして消去せよ!」
孔明が敷いた石兵八陣の全ての岩が一斉に震え、術式の崩壊を訴えた。
地面を照らしていた八卦の紋様は高音を響かせてひび割れ、光を一気に失っていった。
同時に、黒い雨雲は白く薄れていき、空の色が反転していった。
「馬鹿な……! 上位の法則で、『律』そのものを……ッ!」
孔明は羽扇を強く握りしめたまま、信じられないという表情で崩れゆく陣を見つめる。
「確率を計算する権能が、この宇宙から奪われた!」
アストラストの神威が戦場を再び支配する。
関羽と張飛を拘束していた「重力増幅」と「因果遮断」は、解除されるどころか致死量まで強化された。
「ぐ、うあああ……! 軍師殿、ここまでか……ッ」
関羽の肉体は数万倍の重力でさらに押し潰され、地面の岩盤は原子レベルで圧壊する寸前まで陥没していく。
張飛もまた、因果を遮断されたまま、存在の定義を失った。
漆黒の蛇矛を抱えた体が、空中で映像のノイズのようにチカチカと揺らぎ、粒子となって分解し始めていた。
アストラストは、もはや英傑たちを見ることもなく、ルミナへと向き直る。
「魔神よ。知恵者の遊戯は終わった。貴様とて、法則の外には存在できぬ!」
ルミナは黒炎と白銀のオーラを最大まで燃やし上げ、最後の抵抗を試みる。
『書き換え規程・存在定義の消去』
彼女の肉体の周囲の空間が、「ルミナはそこに存在するか?」という根源的な問いを突きつけ始めた。
魔神の強大なオーラすら、宇宙の基本法則によって「不安定な幻影」として扱われ、その輪郭が揺らぎ始める。
「くっ……! 私は……すべてから切り離されて……無になるのか……」
ルミナは呻き、全身の力が抜け落ちる。
孔明は術式が破壊された衝撃で倒れ、関羽と張飛はすでに肉体消滅寸前。
ソウルヴァース学園のグラウンドに、黄金の巨神の冷たい宣言が響き渡った。
「絶望せよ。全ては、我の掌の上にある」
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