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919 勝ちどきの代償──シルヴァーナの刃

「絶望せよ。全ては、我のてのひらの上にある」


 孔明、関羽、張飛の三英傑は崩壊寸前。

 魔神ルミナも≪存在定義エンティティ消去イレーズ≫により肉体が揺らぎ、その輪郭りんかくが薄れていた。


 アストラストは――

 自分の勝利を確信し、満足げに黄金の巨体をきしませた。


 彼がルミナへ向けた瞳を、完了の合図のように、わずかに閉じた。


 ——————その刹那せつな


 ≪セイレーン・フォグ≫で姿を隠していたシルヴァーナが、虚無から光速で飛び出した。

 白銀の残光が弾け、細身の片刃がアストラストの首元を一閃する。


「上位神ほど、勝ちどきの直後がスキだらけ。リチャードさんの読み通りね」


 アストラストは、何が起きたのか理解できなかった。

 自身の≪存在定義の消去≫が、ただの物理的な斬撃ざんげきに突破された事実を受け入れられない。


 遅れて鈍い衝撃音が地を揺らし、巨躯きょくの首が空へ跳ねて落ちた。


「馬鹿、な……

われの絶対防御律が、なぜ……」


 シルヴァーナは剣についた神血を払うと、崩れかけのルミナへ目を向けた。


「ごめんなさい、ルミナ先生。

作戦どおりだけど、本当にギリギリだったわ」


 そのとき、転送光の中からリチャードとロウィンが現れる。


 アストラストの切断された首は転がり、理解を超えた表情でリチャードを見た。


「まさか……最初から狙っていたのか?」


「ええ、この瞬間をずっと待っていたんです」


 リチャードは、冷ややかな笑みを浮かべた。

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