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003 ポジティブ魔王シルヴァーナの妄想ひみつ日記

 こんにちは。シルヴァーナです。


 今日は、ほんの少しだけ……大切な人の話をしてもいいかな。

 誰にも言えないこの気持ちが、胸の奥でぽうっと灯っているの。

 どうしても、言葉にして残しておきたくなったから。


 彼の名前はロウィン。


 今は異世界RPG《吾輩は異世界から来たニャン娘なり!》の中で、勇者として冒険を続けている。

 少し前までは、“村人Aクラス”と笑われていたけれど――私はよく知っている。


 不器用で真っ直ぐ。誰より努力し、決してあきらめない人。


 だから、きっと最後までやり遂げる。

 そう信頼している。


 ……いや、それだけじゃない。


 私は――ロウィンのことが、好き。


 目が合うだけで鼓動が高鳴り、名前を呼ばれるたびに胸の奥がぎゅっと締まる。

 離れている時間が長くなるほど、胸の内が寂しくなっていく。


 こんなふうに誰かを想うのは、初めてかもしれない。

「そばにいたい」とか「守りたい」なんて言葉だけでは足りないほど、切なくて温かい。


 ……本当は、すべてを捧げたい。

 自分のすべてを預けてもいいって、心から思える人。


 でもね――私、魔王だから。


 誰にも言っていなかった秘密。

 “最強のダークエルフ”と呼ばれているけれど、本当はもっとおしゃべりで、泣き虫で、甘えたがり。

 きっと、ロウィンが思っているよりずっと普通の女の子。


 だけど、まだ彼には言えない。

 もし私の正体を知ったら、驚くだろうし、怖がるかもしれない。


 それでも伝えたい。

 この想いも、この姿も、この運命も――すべて本当の私なんだって。


 だから今は黙っている。

 彼が自分の冒険を続けているから。

 その背中を、信じて見守りたい。


 ……でもね。


 本当は、私も一緒に行きたかった。

 肩を並べて戦い、同じ景色を見て、同じ夜を越え、隣で笑いたかった。


 何度も願った。

 けれど、“待つ”ことを選んだ。

 それが、彼への信頼のかたちだから。


 ……それでも、もし。

 彼が私のことを忘れてしまったら?

 旅の途中で誰かを好きになっていたら?


 そんな想像はしたくないのに、夜になると浮かんでしまう。

 胸がきゅっと痛む。


 私の想いが届かなくても。

 彼の物語に私がもう登場しなくても。

 それでも私は、ロウィンを想い続ける。


 どんな選択をしても、私の気持ちは変わらない。

 それが私の勇気。


 だからロウィン。

 どうか歩き続けて。

 自分の旅を、自分の信じた未来を――最後まであきらめないで。


 私は、ここにいる。

 あなたが「帰りたい」と思える場所で、待っている。


 たとえ世界が終わっても、

 この気持ちは終わらないから。

 それでは、次回の冒険もお楽しみに!

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