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そしてヨーロッパ  作者: 船木千滉
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第10話 (その3)

 日曜日、弘明は朝から観光バスに乗った。幸い天気も良く、片道40キロ程のフレデリクスボー城を観光し、昼過ぎにはホテルへ戻った。もう帰国が近いと思うと、弘明はその足でまたストロイレ通りへ向かった。


 昼は広場のキッチンカーでホットドッグを買った。店員の問いに考えもせずにイエスを繰り返すと、ソーセージが隠れるほどカラシがのっていた。


 時間を忘れて街を歩いた。夕暮れ時、まさか夕べと同じ店へ行くのも憚られ、思い切って弘明は窓から見つめ合う男女が見えた店へ入ってみた。


 元々変に人見知りする弘明だが、日本を離れて1ヶ月、弘明の中で何かが変わるには充分だった。


 当てずっぽうに注文した料理を待つ間、先に出た赤のグラスワインを燻らす様に傾けては一口含んだりした。


 日曜日のせいか店は家族連れが多く、見ているだけで火傷しそうなカップルはいない。だが家で待つ息子と同年齢の子らが、親と一緒に食事を楽しむ様子に、なにやら肩身が狭い気のする弘明だった。


 食事の後、早々にホテルへ戻り翌日の準備をした。


 土日の休養を経て月曜日の朝10時、まずコンゲンスニュートー広場近くの船会社を訪問した。そして午後1時、AMPシッピングを訪ねたのだった。


 弘明は8月に神戸港で会った船長にアポを取っていた。近々デンマーク本社を訪ねると、弘明が船長に切り出すと、彼は9月から本社勤務だと言った。日程が決まったら必ず連絡しろと言われ、アポを取っていた。


 だが訪ねて驚いのは、改めてもらった名刺には船長の肩書とは別に、テクニカルダイレクターの役職名があった。それは明らかに彼が、技術系トップに昇進したという証しだった。


「Captain, Congratulations!」

 と、弘明が手を出すと、彼は分厚い手で手を握り返して言った。

「I'll ask you from now on!」

 そう言われた弘明は、顔を取り繕いながら心の中で船長の言葉を反芻した。


 もうニューヨークの失敗は御免だと思う弘明は、彼はこれからもよろしくと言っただけか、とも思いながらやはり胸は期待に膨らんだ。


 2時間後、弘明は船長と別れてAMP本社ビルを出た。

 そこで弘明は、改めて屋上の社旗を見上げて念じた。

(きっと今度の注文を取って、またここへ来る)

 胸を張って見上げながら、そう心に誓うのだった。


(つづく)

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