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そしてヨーロッパ  作者: 船木千滉
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第8話 (その2)

ドイツ船級協会、通称GLのハンブルク事務所を訪ねる弘明。

面談はともかく、終わったあと訪ねた店は・・・・・・。

 午後1時、弘明はGLを訪ねた。どんな所なのかと思えば通りに面した貧相な事務所で、広さもちょっとした理髪店ほど。


 前日ロッテからアポを入れ、午前中に電話した上での訪問だった。出迎えたのは細身で背の高い二人の男、他に誰もいない殺風景な事務所だった。


 面談は難航した。初めて接するドイツ人なのだが、なにしろ青白い顔をした二人はいかにも理数系臭く、最も弘明の苦手そうな相手だった。それに英語の会話は滞りがちで、細かいニュアンスが伝わらない。


 結局1時間ほど掛かって、芙蓉が普段コンテナ船のシステム計算に使っているロイド船級のルールであれば、GLの方で確認してエンドースするという。


(こんなことなら、わざわざ訪ねる必要はなかった)

 と思うと、内心弘明は落胆するばかりだった。


 そんな弘明が礼を言って帰ろうとすると、

「どうやって帰るのだ?」

 と、立ち上がった年輩の方から聞いてきた。


 ホテルでもらった地図を頼りに2時間ほど歩いて来ただけに、弘明も答えに詰まり適当にタクシーと答えた。すると男が被せる様に言う。


「ここは日本とは違う。タクシーはキャッチ出来ない」


(なんだ日本へ行ったことがあるのか)と、弘明は男の水臭さにうんざりしたが、そこではたと困った。


 その思いが顔に出たのか、男は先に事務所の入口へ行くとドアから半身を出して、えらく流暢に道案内するのだった。


「この先にブルーの看板が掛かった店があるが、そこから左に曲がってしばらく行くとバーがある。そこで頼め」


 男は高い鼻で指し示す様に説明すると、弘明が表へ出たのを確認して言葉少なく中へ戻って行った。


(そう言うなら、呼んでくれても良いだろうに) 

 と、愚痴を言い間もなく目の前でアルミサッシの戸がバタンと閉まった。


 一人取り残された弘明は、仕方なく交通量の多い道の脇をトボトボと言われた方へ歩いた。この看板を左へ曲がって……と、道を辿っていくが店らしい店がない。


 だが1軒、それらしき看板があり近づいていくと、世界中みな同じ様な雰囲気の店があった。元々原色であろう看板や外壁は薄汚れ、通りに面した戸はネガの様な色合のガラスが嵌っていて中が見えない。


(大丈夫なのか)

 と、戸を開けた途端、弘明はカウンターの奥に立つ女と目が合った。

 思わず目を逸らした弘明は、ずらりと座った男らの視線を浴びるのだった。


(つづく)

バーカウンターに座った男たちは・・・・・・明日へ続く。

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