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風を測るー梁末紀行ー  作者: サメ


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22/23

第二十二話 川沿いの村

春の市が終わった翌日、沈遙は南へ向かった。宿の主人から、川沿いに小さな村があると聞いたからだった。

北陵の町から半日ほど歩くと、大きな川が見えてきた。雪解け水を集めた流れは思った以上に勢いがある。岸辺では何人かの男たちが網の手入れをしていた。

「こんにちは」

沈遙が声を掛ける。

男の一人が顔を上げた。

「旅人か」

「都から来ました」

「役人さんか」

「ええ」

男は少し驚いた顔をした。

「珍しいな」

それは北陵へ来てから何度も聞いた言葉だった。

沈遙は岸辺に腰を下ろした。

「魚を獲っているのですか」

「春はな」

男はうなずく。

「冬の間は難しい」

そう言って網を持ち上げた。

何か所か補修した跡がある。

「毎年直すのですか」

「使えば傷む」

男は笑った。

「人間と同じだ」

沈遙もつられて笑う。

しばらく話を聞いていると、川は村の暮らしに欠かせない存在らしかった。魚を獲るだけではない。水を引き、家畜に飲ませ、人々の生活を支えている。

村へ入ると、子どもたちが川辺で遊んでいた。

その中の一人が沈遙を見て駆け寄ってくる。

「都の人か」

「そうです」

「都には川があるのか」

「ありますよ」

「この川より大きいか」

沈遙は少し考えた。

「もっと大きな川もあります」

子どもは目を丸くした。

「見てみたいな」

どこかで聞いたような言葉だった。

先日会った羊飼いの少年も、都を見てみたいと言っていた。

沈遙は記録帳を取り出す。

『若者や子ども、都への関心あり。』

短く書き留めた。

昼過ぎになると、小さな食堂で休憩を取った。

店の主人は気さくな男だった。

「村は静かですね」

沈遙が言う。

「それが取り柄だ」

主人は笑う。

「何もないが、腹は減らん」

その言葉にどこか北陵らしさを感じた。

豪華ではない。

豊かとも言い切れない。

だが人々は土地に根を張り、自分たちの暮らしを守っている。

食堂を出る頃、空には薄い雲が広がっていた。

川面を渡る風はまだ冷たい。

沈遙は橋の上で立ち止まり、流れる水を眺めた。

都では人の流れが絶えない。

ここでは水が流れ続けている。

どちらも止まることなく先へ進む。

そんなことを考えながら、沈遙は北陵の町へ戻る道を歩き始めた。

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