第96話 「煽り」
「これで二人の登録手続きは完了だ。後の説明はユウビちゃんから聞いてくれ」
ザウールが歯を出して笑いながら受付の奥へと去っていくと、少し呆れたような顔でユウビさんは説明を始めてくれた。
「それでは、マスターに代わって私が説明させていただきます。受付の『ユウビ・ミュラー』です。」
「よ、宜しくお願いします…」
なんて綺麗な仕草なのだろうか。
この深々としながらも綺麗なお辞儀に思わず釣られて一礼してしまった。
「まずは当ギルド『ホワイトヴァイス』について説明いたします。ここは…」
あまり乗り気ではなさそうなシルフさんが隣で腕を組んで退屈そうにしていたが、ユウビさんは気にせず話を進めていく。
「…そして現在のマスターであるザウール・ラホワイトがこの地にギルドを構築し…」
「なぁ、ユウビさんとやら」
あくびを一つしたシルフさんが話を遮った。
「はい、何かご質問でしょうか?」
「私達は今すぐにでもアヴァロンに向かわないといけないんだ。こんなところで時間を潰している訳にはいかないんだよ」
「ですが、お二方にはまだ北西部への移動許可は出せない事になっておりますので」
「移動許可だ?ここに所属していれば可能だっていうんで仮で登録したのに、話が変わってくるぞ」
普段温厚なシルフさんがここまで不機嫌なのは初めて見た。
肩に乗っていたラズリも少し怯えた表情をしている。
「ですから、私の話を最後まで聞いていただければ幸いなのですが」
ユウビさん…
「それに、実力が本物であれば許可はすぐ出ますよ、"本物"であれば」
大人しそうな見た目によらず煽りが強い…
「中々言うじゃないか、そういうアンタはどうなんだ?」
「私は既に許可をいただいています。私"は"本物なので」
「ほぅ…」
「もし私との勝負に勝てるのであれば、すぐにでも許可証を交付いたしますよ。勝てるのであればですが」
流石にそんな分かりやすい煽りに乗っかるとは…
「上等だ、その腐った性根叩き直してやるよ」
「それでは、地下闘技場にて相手になります。こちらへどうぞ」
受付の横にあった地下へ続く階段を降りていくユウビさんの後を追うようにシルフさんも平静を装いながら続いていった。
「シルフさん」
「なんだ」
煽りに苛立っているのがすぐに分かる顔色だ。
「あの女を黙らせたら、すぐに北西へ出発するぞ」
そう簡単にはいかないような気がする…
だって…
先を歩くユウビさんが不適な笑みを浮かべていたから…




