第95話 「登録」
ギルドの中に入ると、大勢の冒険者が酒を交わし賑やかに屯し、木で出来た机と椅子にグループ毎に座って話し合っている。
これだけ人口密度の高い室内は初めてだ。
しかもこの階だけではない。
ほぼ同じ広さが2階…3階…4階まである。
「相変わらずうるさいところだね」
「シルフさんはここに来たことがあるんですか?」
「昔に何度かね、当時よりも所属冒険者も増えているようだし、受注依頼も多くなっているようだ」
シルフさんの視線の先に大きな看板のような物が立っており、そこに貼られた大量の依頼を冒険者達がどれにしようかと選んでいた。
「受付でこの手紙を渡せば、マスターまで通るだろう」
シルフさんが迷わず歩き始めたので、その後を着いていくと書類を凄い速さで捲りながら作業を進める女性の前で立ち止まった。
「すまない、ここのギルドマスターに届け物なのだが」
書類を捲る手を止めて、こちらに視線を向けてくると端麗な顔立ちの女性と目が合った。
「はい、何でしょうか?」
「この手紙だ」
「お預かりいたします」
淡々と知性のある話し方の女性に少し見惚れてしまった。
「差出人はクィルノーツ様……確認の為、中身を拝見させていただきます」
「あぁ、頼む」
よく考えると、これだけ賑やかなギルド内で良く集中して作業出来てたな…
「拝見いたしました、ギルドマスターへ急ぎ繋ぎます」
そう言うと、受付の女性は耳の近くに魔法陣を展開し何か小さく呟いていた。
「…お待たせいたしました、ギルドマスターがこちらに向かっておりますので、少々お待ちください」
「ん?向かっている?」
「はい」
「なぜだ、私達はその手紙を届けに来ただけだが」
「その手紙の内容にそう記されておりました」
「記されていたって何を…」
「お二方の当ギルドへの冒険者登録の手続きについてです」
「ちょっと待て、それはどういう…」
「ユウビちゃん、あのクィルノーツの使いの二人というのはその方達かい?」
受付の奥から貫禄のある声が聞こえると、髭を生やし、ロングコートを着たかなり体格の良い男が現れた。
「はい、こちらの二名様が登録希望の方達です」
「だから待てって、話が分からないし冒険者登録なんて何も聞いていないぞ」
「ん?ユウビちゃん、間違いないのかい?」
「はいマスター、確かにクィルノーツ様からの手紙にはそう記されておりますが」
「その手紙見せてくれ」
シルフさんが手紙を半ば強引に奪い読んでいると、マスターと呼ばれている男性が口を開いた。
「うちに登録する際は俺と一戦交えて合否を出すのだが、あのクィルからの推薦とあれば断る理由は無い」
「はぁ…そういうことか…クィルのやつにまんまと転がされたって訳だ…」
「何て書いてあったんですか?」
「今、この王都から北西への渡航はこのギルドに登録されている冒険者のみ許されているそうで、ギルド嫌いの私に黙って推薦状をここまで運ばせられたって事だ」
「ギルド嫌いって?」
「昔、色々あってな」
そう言って俯くシルフさんはあまり話したくなさそうだった。
これ以上詮索するのは止めた方が良さそうだ。
それにしても…
クィルさんって何者なんだろうか…
こんな大きいギルドのマスターを動かす程の人なんて…
「決まりだな、ようこそ『ホワイトヴァイス』へ。マスターの『ザウール・ラホワイト』だ」




