第94話 「ギルド」
小鳥のさえずりと風で揺らぐ草木の音だけが聞こえてくる。
その静穏をこの人はすぐに打ち砕いてきた。
「僕と、結婚してください」
「え?」
「おい少年、君は急に何を...」
「少年ってやだなぁ~僕は18歳の立派な男ですよ」
「……えっ?!」
「童顔って良く言われますけどねぇ。それに比べてフェリスさんは大人の美しさを兼ね備えた方で…」
「いいか少年、この子はまだ15歳だ」
「……うへっ?」
呆気に取られた表情で私の顔から視線を外せなくなっている。
「……と、歳下?」
「そう…ですね…」
「…僕としたことがなんてことを……!!」
そんなに苦悩するのかというくらい膝から崩れ落ち天を仰いでいる…
「フェリス気を付けろこういう変なやつには…」
「はい…」
「変なやつではないですよ、僕はただ困っている女性を見たら必ず助ける主義なだけです」
「面倒なやつに救われてしまったな」
「はい…」
まぁ確かに救われた事は本当ではあるけれども…
「エナンジと言ったな、なぜこんなところにいたんだ?」
「依頼ですよ、ブラッドシアンの討伐依頼がギルドに要請されていたので」
「ということは、王都ギルド所属の冒険者ということか?」
「えぇ、そんなところですね」
大きな木槌を担ぎ上げると、自然と笑みを浮かべている…どうも掴み所の無い人というか、距離を縮めては来るけれど、こちらからは近付いていけないように感じる...
「とにかく助かったのは事実だ、改めて礼を言う。行こうフェリス」
「あ、ありがとうございました…」
「気を付けてくださいね、まだブラッドシアンの討伐は全て終わっていないので…」
笑顔で手を降るエナンジに軽く会釈をして、その場を後にした。
「まさかこんなところで会えるとは…『東風のシルッフス』さん…」
〈セレニス大陸 王都グラント・ヴァイス〉
「ここがこの大陸の王都…」
巨大な門をくぐり抜け、視界に広がるのは大勢の人が行き交う大通りとその先に建つ巨大な城。
アライア・へウンとどこか似ている造りだが、通り沿いに売られている物は見たことの無い物ばかりだった。
「よし、まずはギルドへ向かおう。クィルから頼まれたこれも渡したいしな。」
そう言って懐から取り出したクィルさんからの手紙を見せてきた。
「その手紙、どのような内容なんでしょうか?」
「さぁね、まぁ他人の手紙は無闇に詮索するもんじゃないし、このまま渡してしまえばいいさ」
「分かりました、それにしても…」
この王都内は明らかに一般人ではない人を沢山見かける。武器を背負った冒険者や魔道師が闊歩していた。
「この大陸最大の冒険者ギルドがあるからな、所属冒険者も大勢いるはずだ。そのギルドはそこの大通りに入って真っ直ぐだ、行こう」
人を掻き分けながら進んでいくと、確かにギルドらしい建物が見えてきた。
だが一瞬見間違えてしまった。
そのギルドは、先ほど見た王城とほぼ同じ大きさの白い建物だったからだ。
「ここが大陸最大のギルド、『ホワイトヴァイス』だ。」




