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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第四章 セレニス大陸編

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第90話 「酒場」


〈セレニス大陸 ソルニ村〉


「それでは、確かに引き受けました。」


村の屯所に駐在している衛兵に密猟者の引き渡しを終え、酒場へ向かっていた。


「この村の酒場のマスターとは古い知り合いでね、情報通でもあるから色々教えてもらいながらるだ腹ごしらえしようか」


すっかり暗くなり、村に点々と照らされている松明を辿りながら歩いていく。


インニッツィオ村と比べると、建物が石造りになっていたり、夜も人通りがあるなど少し栄えてはいる様子だ。


「ここだ」


扉の隙間から明かりの漏れた家。その扉を開けると、中から酒の匂いに混じって食欲のそそる良い薫りが漂ってきた。


「わぁ…」


落ち着いた雰囲気の中で、村人達が1日の疲れを癒そうと食事をしながら酒を交わしあっている。


この雰囲気は嫌いじゃない。


「おぉ、来たかシルフ。そろそろだと思ってたぞ」


カウンターにいた鼻下に髭を生やした男の人が話しかけてきた。


「マスター、元気だったか?」

「見たまんまさ、まぁ座ってくれ」


カウンター席に案内され、マスターと呼ばれた人が私に水を一杯とシルフさんにこれだろとばかりに白い飲み物を出していた。


「久しぶりだ、ケガワウシのミルクを飲むのは…」

「え、ケガワウシ?」

「シルフはいつも来たらこれを飲んでいくんだ。まぁ、今じゃ輸入出来なくなった代物だから、かなり貴重なのだがな」

「やっぱりアラシアと交易が止まった影響は大きいね…」


「お嬢ちゃんも飲みたかったら特別に提供できるが、飲むかい?」

「あ、いや…私は水で…」

「そうかい、今日来たのは密猟者の引き渡しだけって訳じゃないんだろう?」

「もう知れ渡ってるのか」

「噂好きな村の情報通なもんでな」


「アヴァロンに向かうんだが、道中で何か変わった事はないか?」


「アヴァロン?」


美味しそうな料理を出しながらマスターはシルフさんと話しているが、私とラズリはその見たことのない料理に目を奪われていた。


「アラシア凍土化の影響で海流が変わって航路に少し変更が出てはいるがそこまで影響は出てないってのと、後は…」


一瞬、マスターが私の方へ視線を向けて来た気がしたが、頬が落ちそうな程美味しい料理に夢中で気付かなかった。


「最近王都からの衛兵が来ていてな、詳しくは分からんが人を探しているとか…」


「人?」


「あぁ、蒼い髪の女と言っていたが…」


「なんだって?」


まさかフェリスの事では…



「マスター、その話は一旦止めておいてくれないか」


懐から取り出した物をマスターへ渡すと、少し怪訝そうな顔を見せている。


「別にシルフとの約束に口止め料なんていらんのだが…あんたは無理やりでも押し付けて来るだろうから受け取っておくよ」


「口止め?それはこの美味い料理達の代金だよ、釣りは取っといてくれ」

「ふん…そうか、ありがたく受け取るよ」



「よし、食べたら宿へ向かおうか。良い温泉のある宿を知っている。」


「おんふぇん…?!むぐっ…けほっけほっ…?!」

「落ち着いて食べなフェリス、ほら水」


「わははははっ!フェリスというのか!随分と面白い女だな」

「フェリスはまだ15だ。食べ盛りなんだよ」


「なに?15?!そりゃすまないな、見た目で勘違いしていた」


「フェリス、マスターの料理は美味いだろう?どんどん食べていいぞ」

「ゴクゴクッ…ふぅ…まだ食べて良いんですか…?」

「おぉ、食べ盛り上等!どんどん食べてくれ!」



この日は忘れる事はないだろうな…


初めて見る時間ばかりだったから…



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