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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第四章 セレニス大陸編

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第87話 「旅立ち」




「お代はいらないだって?」


村の市場で合流したシルフさんに通貨をそのまま返して説明すると、とても驚いていた。


「金にうるさいあの人がまさかねぇ…」

「私達を応援していると、快くこれを…」

「こんなにかい?とりあえずまぁいただいておくけどさ…」


「おーいシルフ!」


声の方向から大きな袋を持った村人達がこちらに向かってきているのが見えた。


「みんな…」

「村、出るんじゃろ?これさ持っていき!」

「おいおい、こんなにたくさん貰えるわけ…」

「ええからええから!ほらこれも!」

「ちょっ…!?」


シルフさんの周りに村の人々が囲うようにしている。


慕われているんだな…


一人一人が笑顔で送り出そうとしているけれど、どこか心配そうな顔をしている人もいた。


子どもの心配をしている親のような顔だ。


「あ"ぁ"ーわかった!もうこの袋に全部入れてくれ!」


その光景を見て思わず笑みが溢れてしまう。


「ほいフェリスちゃんも!」

村の1人が大きな袋を持たせてきた


「え?」


「ご飯たくさんあるだでね!そのちびちゃんには小魚さ用意しとうで!」


目を輝かせるラズリが袋に顔を突っ込むと咀嚼する音が聞こえてきた。


「あ、ラズリ!こら!」


「ええんだええんだ!おら達の捕ってきた魚は世界一だ!たくさん食わせてやってけれ!」



この村の居心地はとても良かった。


少ししかいなかったけど、母と過ごしていた故郷の時間を思い出してしまう。


私がこんな気持ちになっているのなら、シルフさんはもっと…


どんどん話しかけられているシルフさんの顔は忙しそうで、とても嬉しそうだ。


「シルフ、フェリス」


「クィルさん」

「クィル、見送りに来てくれたのか」

「当たり前だ、おまえ達はこの村の恩人なのだからな」


「恩人って大袈裟だね…」

「大袈裟なもんか、"二度"も救われたんだからな」


「二度?」


「シルフは何年も前にもこの村を救ってくれた。あの時は…」


「クィル、その話はもういいだろ」

「あぁ、そうだな…とにかく、本当にありがとう」


「いえ、私の方こそ助けていだたいてありがとうございました」



村の外は平原が拡がっていた。

その真ん中を獣道のような人が往来して出来た道が通っている。


見送りに来た村人を従えているクィルさんが歩み寄ってきた。



「シルフにフェリスちゃん、これを預かってほしい」


そう言って手渡されたのは一通の手紙。


「アヴァロンに向かうのなら、必ず『王都グラント・ヴァイス』を通る事になるはずだ。その王都にある冒険者ギルドのマスターに渡してほしい。」


「ギルド…」


「分かった、確かに預かったよ」


私はその手紙を懐にしまい、フードを深く被りローブを着直した。


「いってらっしゃい、クィル、フェリスちゃん」



「行ってくる」

「行ってきます」


村を背に、ラズリが肩の上で座りながら視界に地平線が拡がっていく。



母のいる所からは離れてしまうけれど、これが近づく一歩になると信じて…


まだ知らない世界へ足を進めた。




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