第86話 「旅支度」
リフィと別れ、村に戻った私達はすぐに旅の支度を進めていた。
基本的にはシルフさんのなんでも収納できる袋、『魔袋』に荷物は纏めている。
初めて見たが、魔力を込めて作られた『魔道具』の一つで、物の大きさをその袋に合わせて収縮させて収納できるのだとか。
「アヴァロンまでは長旅になる。途中いくつかの街や村も経由はするが、充分に支度はしておこう」
「分かりました」
「よし、では手分けして物資を集めるとしよう。この先の市場で調達してほしい物を書いておいたからフェリスはこれを見ながら市場で買い物を頼む」
そう言ってシルフさんからこの大陸の通貨と一枚の紙を貰った。
「ありがとうございま…す…?」
紙を開いた途端、思わず絶句してしまった。
なんて書いてあるか分からなかったからだ。
この大陸の文字とかではなく、私の知っている言語ではあるのだろうが…その……
字が汚い…
片腕ということもあるかもしれないが、聞いてもいいのかどうか…
ラズリも肩の上で怪訝そうな顔で紙を見つめていた。
「えっと…シルフさんこれは…あれ?」
顔を上げると、シルフさんは既にいなかった。
「ん~…市場の人に聞きながら買い物しよっか…」
シルフさんの言っていた方角へ向け、足を進めていくと少しずつ人通りが多くなり賑やかになり始めている。
海岸沿いから少し歩いた所…
ここが村の中心地であり、市場で間違いないようだ。
村人達が屋台を広げ、自慢の魚を並べて人呼びをしている。
所々で村の住人では無さそうな人もいた。
おそらく冒険者のような、村の外から来訪した人達なのだろう。
早速、このメモの解読をお願いしようと周囲を見渡してみる。
「フェリスちゃん!こっちさおいで!ええ魚獲れちょるで持っていき!」
7日過ごしたこの村で私はある程度認知されはじめていた。
村の人達は私の髪色に関して特に追求してくることもなく受け入れてくれている。
「おばさんありがとうございます、あのちょっと聞きたいんですけど…」
私はシルフさんからの紙をおばさんに見せた。
「こりゃあシルフの字だがね」
「そうなんです…私では読めなくて…」
「あっはっはっは!!そういうことだがか!どれどれ…」
どうやらそこには保存の聞く食料について書かれていたようだ。
おばさんが紙を見ながらあれとこれと手際よく食材を集めてくれている。
そのほとんどは魚の干物だったようだ。
「あいさ!これで全部だと思うでな!」
「ありがとうございます、これお金です」
「金はいらんでよ、持ってってくれ!」
「え…?」
「シルフとフェリスちゃんはこの村を助けてくれた恩人さ、こんなことでしかお返しできんけども受け取ってくれ」
「でも…」
「いいんだいいんだ!この保存食を見てたら村を出る事も分かるでね、おばさんからの応援だと思っちょってくれな」
「あ、ありがとうございます…」
「達者でね」
「ありがとう、おばさん!」
抱えきれない程の食料を魔袋に詰めてシルフさんの元へ向かってる道中、村の景色をゆっくり眺めてみる。
どうやら、私はこの村がとても好きになっていた。




