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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第四章 セレニス大陸編

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第84話 「導き」


「……ん…」


目が覚めると、蒼く美しい鬣が視界に揺らいでいた。

見覚えのある綺麗な色だった。


「リフィ……助けてくれたのね…ありがとう…」


声を聞いたリフィは小さく嘶いている。無事であることを喜んでいるようだ。


「ラズリは…シルフさんとクィルさんも…」


「生きているよ」


声の方へ視線を向けると、シルフさんとその肩に乗っているラズリがいた。


「良かった…クィルさんは…?」

「クィルはダメだった…」

「え……」

「最後まで責務を全うして…」

「そ、そんな…」



「おい、勝手に殺すんじゃない」


振り返るとクィルさんと目が合った。


「ゆ、幽霊?!」

「違う、そもそも俺も死んでない」

「え…あ、良かった…」


「あっははははははは!!さすが頑丈だけが頼りな男だ!」

「笑うな、それよりもこの状況どうするんだ」


クィルさんの指差す方向…動かなくなったクラーケナーを咥えながらこちらを見つめている巨大な白い鯨がいた。


「敵意は無さそうだが、下手に動かないほうがよさそうだ…」

「だが、どうして五神獣がここに…」

「五神獣?!」


さらっと言った言葉を聞き逃さなかった。

全身が白く美しく、その瞳は故郷にいたあのドラゴンと同じ瑠璃色の瞳をしている。


見惚れてしまうその姿に確信はできた。


「助けてくれた…五神獣が…」


クラーケナーを丸呑みにすると、その巨大な瑠璃色の瞳が私を捉えてきた。



『ソナタガ ノアノコ カ』



「え?」


今声が聞こえた…

でもクィルさんでもシルフさんでもない初めて聞く声…



『レイヲ イウゾ ノアノコヨ』


「えっと…」


まさか、この白鯨が話している…?


だが二人に声は聞こえてはいない様子…


『エイエンノ ハルガ オトズレル チヘ ソナタノ ノゾムモノ マツ』


「永遠の…春……」


「動いたぞ!気を付けろ!」


白鯨は身を翻し、悠然と姿を消した。


「まさか五神獣に会える日が来るとはな…」

「クィルさん、あの白鯨は本当に五神獣なんですか…?」

「間違いない、セレニス大陸を司る『創造の白鯨 ヴァイス・バレナ』だ」


「ヴァイス・バレナ……」


「フェリス、私にはさっきあの五神獣と何か話しているように見えたが…」

「確かにあの白鯨がいたときに声が聞こえて来ました…『永遠の春が訪れる地』がとか…」


「永遠の春……アヴァロンの事か?」

「アヴァロン?」

「セレニス大陸から北西にある大陸だ。そこは他の大陸とは違い、全土が春の気候である珍しい大陸だ。」

「私はそこに行けと、そう言われたような気がしました…」


「ヴァイス・バレナは五神獣の中でもかなり知能が高いと聞く。必要とする者に道を造り、導いてくれると言い伝えられているが…」


「導いてくれる…」


私は母を助けたい…

でもそれはアラシア大陸に行くのではなくアヴァロンに行くことが正しいということなのだろうか…


ラズリも、あの大きさでは私を乗せて翔ぶことは出来ないだろう…

何度かラズリの身体を元に戻せないか試してみたけれど、断念した。



今は、あの白鯨の言う通りにした方が良いのだろうか…



私は…どうしたらいいか、波に揺られ、母が無事だと信じて、この水平線をじっと眺めていた。





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