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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第四章 セレニス大陸編

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第83話 「水飛沫」


何が起きたのか全く分からなかった。


気づけば私は耳鳴りが止まない両耳を塞ぎ、激しい頭痛に襲われながら海目掛けて降下していた。


ラズリは…シルフさん達はどうなったの…


状況を把握する間もなく、海に叩きつけられ全身に衝撃が走った。


耳鳴りが収まり始めると気泡の弾ける音が聞こえ、痛みに耐えながら水中で目をゆっくりと開く。

だがぼやけて何も見えていないが、巨大なクラーケナーの暴れる白い影がうっすらと確認できた。


息が苦しい…呼吸ができず胸が締め付けられる…

水飛沫の上がる水面が暗闇に覆われていく…



意識が保てない…視界が…遠のいていく…


ラズ…リ……










「フェリス!!!どこだ!!」


クラーケナーの大咆哮でフェリスが海に転落してから数分が過ぎていた。


「くそっ!!触手を避けながらじゃ探し出せない!!」

「私が潜降して探すからクィルはクラーケナーを引きつけてくれ!!」

「引きつけろって…いくらお前でもこの状況じゃあ無理だ!!」

「黙って早く引きつけろ!」


返事も待たずにシルフは荒れ狂う海をリーフィーホースと共に潜降した。



あの子はここで死んではいけない…昔訪れた村で出会ったあの人を…

私の人生を導いてくれたあの人の大切な存在を…


私は守らなければいけないのだから。



触手の蠢く海中で黒い小さな影を見つけた。

すぐに抱き寄せ、海面へ浮上し声をかける。


「大丈夫か!?」


その小さな身体を抱きかかえながら必死に声をかけ続けると、収縮したラズリが弱々しい鳴き声を出した。


「身体が縮んでしまって墜落したのか…フェリスは…」


辺りを見渡すが、触手のあげる水飛沫で探すことができない。

この子を抱きかかえていては水中に行くことも難しい…


どうする…このままではあの子は…




「フェリスーーーーーーーー!!!」




突然、目の前から何かが飛び上がってきた。

触手ではない、それよりも小さいが頭上を越え明らかに意思のあるような動きをしている。

その姿が陽光に照らされると、はっきりと視認できた。



「蒼い…リーフィーホース……」


初めてみた体色の個体だ…

その蒼く照らされる鬣に目を奪われていると、その背にいた姿に思わず声を荒げてしまった。


「フェリス?!」


蒼いリーフィーホースが同じく蒼い髪のフェリスを背に乗せ…助けてくれたというのか…

あまりのことに驚きを隠せずにいると、その個体はフェリスを乗せながら海面で何かを呼び寄せるように嘶いていた。

「一体何をして…あっ…」

目の前まで触手が伸びてきていることに気が付けず、攻撃されると思った次の瞬間…




あの巨大なクラーケナーが全身ごと海面から吹っ飛ばされ、触手が私達から遠のいていった。



「な、なんだ…!?」


クラーケナーを喰い上げる程の存在…

その姿は神々しく、だが猛りながら白い巨影は海から飛翔し、太陽を覆いながら飛沫をあげ水中に戻っていく。


「あの姿は…『創造の白鯨 ヴァイス・バレナ』…」






「まさか五神獣が私達を守ってくれた…のか…」

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