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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第四章 セレニス大陸編

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80/110

第80話 「刹那」

「ラズリ?!」


肩から飛び降りたラズリが咆哮し、身体が輝き始めた。


村の中心で獣の咆哮が聞こえ、村人達が何事かとパニックを起こしていく中…


キュルアアアアアアッ!!!


さらに咆哮をあげたラズリのその身体は徐々に大きく元に戻っていた。



気付けば、私の知っているラズリが目の前で黒い翼を広げ、羽ばたこうとこちらを見ている。


鞍も無いし、まだ目覚めたばかりでラズリと空を翔べる自信なんてない。


それでも…


「助けに行こう」


迷う事なんてない。

私を助けてくれた人達を今度は私が…


ラズリに跨がると、その体温が高揚しているのを感じた。

準備は出来ている、そう言っているようだ。


周囲の村人達が距離を取りながらもこちらに視線を集めていたが、私達は空だけを見ていた。


「翔んで!!」


その言葉と同時に翼を羽ばたかせ、辺りに強風を巻き起こしながらラズリは水平線を目掛けて飛翔した。






〈インニッツィオ村沖合い コッツァロ岩礁〉



「味方同士近くに集まりながら回避しろ!誰か沈められたら一番近い者が助け出すんだ!」


クィルの指示が海上を飛び交う中、それでも1人また1人と襲われて確実に全滅に近付きつつあった。


「クィル!!このままだと私達も殺られるぞ!!」

「それでも見捨てる理由にはならないだろう!!」


銛を片手に振りかざしながら、クィルは水中から襲い跳んでくるリーフィーホースを突き刺して回避していく。


シルフも援護しながら動いてはいるが、全体の援護までは出来なくなってきている。


「くそっ…応援はまだ来ないのか…?」

「ここから片道だけでもかなり時間がかかるんだぞ…!耐えるしか……」


だが、既に周りを見れば生き残っているのは両手で数えられる程…シルフが合流した時の人数から半数以下が殺られてしまっていた。


「クィル!!危ない!!」


クィルの背後からリーフィーホースが飛び掛かっていたが、気付いていない様子だ。


もう間に合わないと思ったその時…


突然、クィルに飛び掛かっていたリーフィーホースが黒い風のような何かに弾き跳ばされた。



「な、なんだ今の…?」


海面付近に強い風が舞い上がる中、その黒い風が次々とリーフィーホースを払い除けていっているのが見えた。


その背に一瞬、青い髪を揺らす姿が見えた気がしたが……


「クィルさん!!シルフさん!!」


その黒い風から聞き慣れた声…


襲い来るリーフィーホースを払い除けていたのは、紛れもないあの時助けた青い髪の少女だったのだ。


「フェリスか?!」


「フェリス!!あんたどうしてここに…」


その声は届いていないのか、フェリスは黒い風に乗りながら私達の周りにいたリーフィーホースを一掃していったのだ。


まさに刹那…

瞬きの間に一匹、また一匹と倒していった。


見上げると、その正体がはっきりと確認できる。


黒い大きな翼。

黒く輝く鱗を纏った獣だ。


名前は聞いた事があっただけで、本当に実在していた事を今思い知らされた。


「フェリス、それはまさかドラゴンか…?」


海面付近で羽ばたかせて滞空しながら、黒鱗のドラゴンに平然と跨がる青い髪の少女。






私達はただ、呆然と眺める事しか出来なかった。






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