第78話 「リフィ」
「綺麗…」
先程まで見ていた個体とは明らかに違う体色をしている。
でも、身体の特徴はリーフィーホースそのもの…
変異種の可能性も考えたが、今はそんなことよりも力尽きかけているこの子を助けなければ。
「待っててね、今治癒するから!」
動けなくなっている蒼いリーフィーホースを観察すると、右目辺りから右前肢にかけて裂傷している。
恐らく、鋭利な爪による損傷…
呼吸も浅い。
裂傷部分に手を添えた瞬間…
「うっ…!!」
眼を見開いたリーフィーホースに突き飛ばされた。
威嚇をするように嘶き、その鬣を奮い立ててその場で身体を強引に起こしている。
裂傷部分から多量に出血しているのを構わずに…
「ごほっ…ごほっ…!」
横腹を諸に蹴られ、全身に重い鈍痛が拡がっている。
心配するラズリが倒れる私に駆け寄ってくる奥で、何度も立ち上がろうと暴れている姿が見えた。
「お願い、暴れないで…!」
大人しい性格と聞いていたリーフィーホースがここまで荒れているなんて…
いや、もしかしたらこの子は…
横腹を抑えながら身体を起こし、ゆっくりと歩み寄っていき、その眼を見て察した。
恐がっているんだ。
その傷の原因である何かに怯えているんだ…
「私はあなたを助けたいの…」
ゆっくりと手を伸ばしなんとかその傷に触れようとするも、近づかせまいと何度もその脚を振り下ろしてくる。
その度に多量の血が流れ出してしまっていた。
どうすれば…
手懐けようにも、リーフィーホースの生態には詳しくないし、周囲には村人もいない。
それでもあの体格からの出血量はもう命に関わる。
「あ…」
思い出した。
前にプロト村の村長から聞いた母の言っていた事…
『名を与えた対象を使役化する力』
母はその時はまだ私にはその力が顕現していないと言っていた。
使役化するということには抵抗がある。
そんなつもりもないし、させたくもない。
でも、今目の前のこの子を助けるためには…
眼を閉じ、ゆっくりと息を吸い込み全てを吐ききる。潮風の匂いとそれに交じって獣の血が鼻から感じ取れる。
「あなたを助けたい…」
リーフィーホースが動きを止めて私に視線を向けてきた。まだ呼吸は荒いものの、さっきまでとは様子が変わっているのが分かる。
手を伸ばしてゆっくりと歩み寄っていく。
警戒心はあるものの、暴れる様子はない。
「大丈夫だよ…『リフィ』」




