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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第四章 セレニス大陸編

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第77話 「異変」



耳飾りに力を込め、生け簀の海水に手を入れていると、警戒もせずにリーフィーホースはその傷をこちらに向け見せてくれた。


噛み傷のような怪我。

身体をぶつけてできた傷ではなく、明らかな外敵からの攻撃…


「痛かったよね、待ってて」


元々の性格なのか、このリーフィーホースの警戒心の無さが気になる。


「シルフさん、さっきこの子達が仲間だと言ってましたけどどういう…」


「あぁ、リーフィーホースは私達が漁に向かう時に船を牽引してくれているんだ。」


「牽引?」


「あぁ、だが牽引だけではなく漁そのものも手伝ってくれる。」


「それって、無理やり従わせているとか…」


「まさか、リーフィーホースと私達は共生関係みたいなところだ。」


「共生…」


「私達の漁は水中でリーフィーホースから酸素を分けて貰いながら長時間潜り、銛で魚を突く。その魚をこの子らに分け与える。お互いに利益のある関係性だろ?それがこの村の古くからの伝統なのさ。」


「へぇ…すごい…」


異種の獣同士による共生関係は聞いたことはあるが、人間と獣によるここまで成り立った共生は初めて聞いた。


「だからこの子らは村の立派な仲間なんだ。だが…」


傷が治っていくリーフィーホースを見て、シルフさんが少し暗い表情を浮かべていた。



「ここ最近、深海にいるはずの野生のリーフィーホース達が浅場付近で目撃されることが増えてな。一度、調査しに深海近くまで潜った時…」


「何か、いたんですか?」


「共食いをするリーフィーホースを見つけたんだ。」


「共食い…」


「魚を主食にしているはずのリーフィーホースなのに、同種を襲って攻撃している個体がいた…その個体は一匹だけじゃない、複数目撃されているんだ」


「じゃあ、その個体から逃げる為に浅場に…」


「おそらくな」


「その個体って、同種だけを襲っているんですか?」


「ん?あぁ、今のところその報告のみ受けているが…」


同種のみを襲う…攻撃性の高い…


思い当たる節があった…


教皇が生み出した人造種…


まさか、ここにも現れているというの…?


「おーーーーーいシルフ!」


村の方角から慌てて呼びかける声が聞こえてきた。

私達の前で立ち止まると、息を切らした男性は整える暇もなくその慌てる理由を話し始めた。




「なんだって?!クィル達の船がリーフィーホースに沈められた?!本当なのか?!」


「嘘なんかつくわけねぇだ!今コッツァロの小岩に座礁してるけんど、シルフに助けさ呼んでこいって!」


「分かった、すぐに向かう!」


「シルフさん、私も何か手伝いを…」


「フェリス、すまないが村で待っててくれ。私は沖合いに向かう。」


「でも…」


そう言うと、シルフさんは目の前の生け簀にいたリーフィーホースに颯爽と跨がり、声をかける間もなく水平線へ走っていった。


「どうしようラズリ…」


キュルッ。


肩にいたラズリは小さな鳴き声をあげて頬にすり寄ってくる。


「私が行っても足手まといになるだけか…」


助けてもらったお礼もしたかったが、余計な事だと感じて海岸に沿いながら村へ足を進めた。


「ラズリ、やっぱり船を沈めたのって人造種の仕業かな…」


キュルルッ!


「そう思うよね、だったら私にも責任が……ん?」


海岸を歩いていると、少し先に踞っている何かが見え、近くに寄って行くと先程まで見ていた獣だということがわかった。


「あそこに漂着しているのって、リーフィーホースかな?」


だが…


「え…」


それは先程まで見ていた深緑の鬣をしたリーフィーホースではなかった。




「蒼い…リーフィーホース…?」

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