第72話 「小さな姿」
「白い巨大な影だと…?」
「それを最後に、母の記憶を夢うつつに感じながら先ほど目が覚めました…」
その後、目覚めた小屋に戻りアラシア大陸の現況について話を終えると、不意に涙が流れている事に気が付いた。
「すみません…」
「フェリスは今いくつなんだ?」
「15です」
「まだ子どもじゃないか…なのにそんな経験をしてしまって……いや…」
何か言葉に詰まっている様子だ。
「俺にも君くらいの息子がいるんだ。」
「そうなんですか」
「まぁ、今は冒険者ギルドに所属していてこの村から出ていってしまったんだがな…」
少し微笑みながらも寂しさを感じさせる表情…それにはどこか見覚えがあった。
「母も…最後に見た母も村長さんと同じ顔をしていた気がします…」
「じゃあフェリスもしっかり愛されているんだな、良かった」
「息子さんがいなくて寂しくはないんですか?」
「寂しいというか…そりゃまぁいなくて静かになっちまったなぁって、たまには顔くらい見せろと思うが…」
「思うが?」
「親としてはたまには会いたいと思いつつ、どこにいても元気でいてくれればそれでいいんだ」
その顔を見て嘘はないというのは分かる。
親ってそういうものなのだろう…
でも、子どもからしても親が元気でいてくれる方がいいに決まってるのに…
『自己犠牲』
その先に残された私達のような人はどうすればいい…
「そういえば、これを預かっておいた」
そういって手渡されたのはローブとナイフ、マテリアから貰った指輪…そして…
「あ…」
母の耳飾りだ。
良かった…てっきり途中で落としていたのかと…
「それとだな…」
まだ何かを渡そうと懐に手を入れている。
「ほれ、君の連れだろ」
そういって何かを握った手をこちらに差し出してきた。
ゆっくりと開かれた手の中にいたのは…
「え?」
黒い翼に黒い鱗、掌サイズの小さな黒いトカゲだった。
そのトカゲは私を見ると愛おしそうに肩に飛び乗り頬擦りをしてくる。
「あ、あなたまさか…ラズリ?」
やはりあの時マテリアは収縮魔法をラズリにかけていたんだ…
でも、どうしてあの上空にいるタイミングで…?
いや、それよりも…
「あぁ…良かった…無事だったのね…」
大きさは違えどこのトカゲは私を助けに来てくれたラズリで間違いなかった。
「あの…私が倒れていた時に一緒に黒い甲冑の女性はいませんでしたか?」
「いや、いたのは君とそのちびちゃんだけだったぞ?」
「この周辺で見かけたとか…そういう情報は…!」
「まだ聞いてはいない、この村一帯で人が倒れてなんていたらすぐに俺の耳に入るが…」
「そう…ですか…」
海に落ちた私とラズリから落ちた彼女は確かに時差があった。
まさか…もうマテリアは…
「悪い方に考えるなフェリス、信じることが大事だ」
「はい…」
「おーーい村長ーーーー!!」
小屋の外から焦りの混じった村人の声が聞こえてきた。




