第67話 「天秤」
「そんな……」
五神獣の一角…
その強大な力を何度も生み出す事が出来るなんて…
「フェリス…人造種は何度でも甦る…この世界に私達『ノアの一族』がいる限り…」
「それってどういう…」
「行けっ!!あの娘を捕らえよ!!」
さらに人造種を出現させた教皇が声を荒げる。
ラズリがすかさず応戦するも数が多く、取り溢してしまった人造種がこちらに襲いかかってきた。
「だめっ!!」
動けない母を庇おうと両手を拡げて瞳を瞑る。
だが、その牙が当たることは無かった。
恐る恐る眼を開けると、飛び掛かってきていた人造種達が見えない程のサイズまで収縮していたのだ。
「これって…マテリアの…」
襲いかかってきていた人造種が全て姿を消すと、目の前に突如グリフォンが現れた。
現れたというよりも元の大きさに戻ったという方が正しいか…
その背には黒い甲冑が乗っていた。
「マテリアっ!!」
「……」
だが、その剣を持つ手は怒りで震えていた。
剣を教皇へ向け、グリフォンがいななく。
「まさか貴様も瓦礫を飛び抜けてきたというのか…しぶとい女だ」
「マテリア…エヴァンスさんは…」
「私を庇って…瓦礫に潰されたわ」
「そんな…それにその足…」
よく見ると、マテリアの右足が潰れて原型を留めていなかった。
「瓦礫に潰されて動けなくなっている所にこの子が来てくれて…私の足になると言ってくれたの」
傷だらけになりながらも気高く立ち尽くすグリフォン。
その姿は誰もがひれ伏しそうになるほどだ。
「教皇が憎い、今すぐにでも八つ裂きにしてやりたい…だけど…」
剣をゆっくりと下ろし、こちらに視線を向けた。
何度も甦る人造種をくぐり抜け、教皇を倒す事が不可能だと悟っている。
「今は…逃げるべきよ…」
「逃げるって…諦めるの?!」
「その人の言う通りよ…フェリス…」
冷静な母の声が聞こえる。
「人造種は私達『ノアの一族』の持つ『呪力』で生成されている…つまり私達が生きている限り何度でも復活してしまう」
「『呪力』って…魔法…?」
「魔法ではないわ…もっと強力な…ノアの一族にだけ宿る……『呪法』…」
「『呪法』…」
「止めるには『器』となれる私と…『貴方』は死ななければならない…そうすれば供給が止まり、二度と復活はしないわ…」
「そんな…そんなの…」
「それに…より強力な『器』となれるのはまだその『呪法』の制御ができないフェリスなの…制御出来なければただ源である『呪力』を吸い続ける事ができるのだから…」
「じゃあ…世界を助けるなら…私は…私は死んだ方が……」
「そんなことは絶対にさせない」
母の声が強く、それでいて優しく荒げた。
「娘の命と世界を天秤にかけられて、世界を取る親なんていない…」
大事な我が子を死なせるくらいなら…
愛する娘を見殺しにして世界を救えるなら…
フェリスが幸せになれる道を創るわ…
母の周囲が妖く光り始め、上空から蒼鱗のドラゴンが母を守るように降り立った。




