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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第三章 王都アライア・へウン編

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第66話 「私だって」


巨大なドラゴンが崩れ落ちてく姿を目の当たりにしていると、裂け目から何か黒い翼が飛び出したのが見えた。


既に左目が氷に覆われてぼんやりとしか見えていないもう片方の目でその姿を追うも、その速さに追いつけず上手く視界に捉えられない。



「………」



いや、分かっている。


あの姿はずっと見てきたのだから…


何度失敗しても諦めずに練習して、その背に乗ってこの世界を一緒に飛べるようになったその姿を…


黒い翼は教皇と私の間に舞い降り、守るように立ち尽くしていた。その背に私と同じ瑠璃色の髪を揺らす背中を乗せて…




「フェリス…」




唸り声を上げ、今にも教皇に飛び掛かろうとしている。


「ラズリ、落ち着いて…」


「ほう、あの落石の雨を飛び抜けて戻ってきたのか…」


不適に笑う教皇は、慌てる様子もなく魔方陣を展開して新たに人造種ダイヤウルフを数体呼び寄せた。



「フェリス逃げなさい…その子と一緒に…」


教会の外から打ち倒した人造種のドラゴンが再び現れるのが見えた。


「逃げない…お母さんを助けるまでは…」

「お願いよ…生きててほしいから…」

「私だって…」




涙が溢れそうになり、歯を食い縛った。



「私だって…お母さんに生きててほしいんだからぁぁぁぁっ!!!」


キュルルルルルルルアアアアァ!!!!


私の声と共に、ラズリがダイヤウルフ目掛けて飛び掛かった。


刹那の如くダイヤウルフを一掃すると、すぐに飛翔して上空へ向かう。


それを追うように蒼鱗の巨大な翼を拡げ、人造種も飛翔した。


「ラズリ、もっと引き付けるよ!!」


乱気流に飲まれぬよう、高度を上げていく。


「もっと……もっと高く!!」


空気が薄くなるのを感じながら、背後に迫る人造種を引き付けていく。


巨大な口を開き、こちらに向けて息吹を吐こうとしている姿が見えた。


その距離はもう息吹を受けてしまう程まで迫っている。


「ラズリ……」


瞳を閉じて、鳴り響く音だけを聞く。


空気の乱れる音…

ラズリの飛翔する翼の音…


そして…




人造種の息吹が放たれた音…





「今っ!!!」


合図した刹那、ラズリは身を翻して人造種の翼膜目掛けて青白の炎を撃ち放った。


その炎は翼膜を貫通して穴を開け、自らもその穴を音速で飛び抜ける。


翼が空気を捉えきれなくなり、バランスを崩した人造種が超高度から墜落を始めるも、その黒い瞳は降下していく私達をしっかりと捉えていた。


「いくよ!!」


直後、私はラズリの背中から離れた。


バランスを崩さないように両手足を拡げ、降下するラズリに視線を向ける。


「撃って!!」


急降下しながら、ラズリは大地に背を向けるように体勢を変えて私の横をかすめながら人造種に炎を撃ち放つ。


その炎は人造種の翼膜を撃ち抜き、体勢を崩しながら横を通り抜けて急降下していく。


「ラズリ!!」


名前を呼ぶと、空中でラズリが私を掴まえてもう一度背中に乗せてくれる。


人造種はその巨体を制御できず、王都の領域外へ爆音と共に墜落した。



倒した…

ラズリと力を合わせて…倒せた…


これでもうお母さんを助けることができた…


ラズリと共に教会に戻ると、急いで母の元へ駆け寄った。


「お母さん!」

「フェリス……」


「もう大丈夫だから…あの人造種はもう…」


「フェリス…逃げて……」


「え?」





「倒せたと思っているのか?」





振り返ると、教皇が巨大な魔方陣を展開して剣を突き刺した。



「倒されたのなら、もう一度錬成すれば良いだけのことだ」



その一声で、魔方陣から倒したはずの蒼鱗の姿が現れた。


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