第60話 「蒼龍」
宝石のように透き通る2本の角。
青く輝く瑠璃色の鱗。
今、目の前に現れたのは見慣れているはずのあの氷檻に幽閉されている巨大なドラゴンだった。
「どうしてここに…」
だが、その瞳は黒くまるで死んでいるような瞳だった。
おそらく人造種だろうが…
その傍ら、崩壊する教会のその中央で教皇が高笑いしていた。
「素晴らしい…素晴らしいぞ!!これが…五神獣が一角『絶望の蒼龍 ノア』か!!」
「ノアって…」
これが、私達一族の根源と言われたドラゴン…
もしここで読んだあの本の通りだとしたら、教皇はとんでもない事をしようとしている…
「‘‘供給元の器‘‘が脆いから不安ではあったが、問題は無さそうだ・・・」
猛る咆哮に思わず耳を塞いでしまう。
そしてその重みか、地面が割れ他の人造種達が割れ目に落ちていくのが見える。
このままでは私達も…
「飛んで!!」
合図とともにその黒い翼を広げ飛翔し、崩れ落ちてくる瓦礫を飛び抜けながら周囲を見渡す。
「マテリアを探してここから脱出しないと・・・!」
「ノアよ、我が命ずる!!あのドラゴンを打ち落とせっ!!」
人造種・ノアがなにやら力を溜め込む仕草を見せ、その口から冷気が漏れ始めている。
さらにその周囲の気温が下がっているのか、朽ちた床に霜が積もり始めていた。
「いた!!ラズリあそこ!!」
人造種・ダイアウルフに地面の割れ目へ追い詰められているマテリアを見つけ急降下する。
だが、その合間に白い翼が飛び込んできた。
「グリフォン・・・!?」
人造種・グリフォンが意図しているように救出の邪魔をしてきた。
その鋭い爪でラズリに襲い掛かるも間一髪で身を翻してかわす。
その傍ら、ノアの周囲から氷柱が生成され異様な光景が広がり始めている。
「早くしないと・・・やっぱり先に教皇をなんとかして・・・」
思考が上手くまとまらず、判断ができない。
「ノア、解き放てぇっ!!」
教皇の合図と同時にその口を大きく開いた。
どうしたら・・・
「フェリス!!」
マテリアの方を見ると彼女はなぜか笑っていた。
「信じてる!!」
「マテリア・・・え?」
次の瞬間、彼女は何の躊躇いもなく割れ目に飛び降りたのだ。
「ダメ・・・マテリア!!」
人造種・ダイアウルフ達も後を追うように飛び降りていく中、私たちも飛び込んだ。
割れ目に飛びこんだ直後、背後から強烈な冷気と爆風が吹き荒れたのを感じたが、振り返らずに落ちていくマテリアめがけて急降下してその手を掴む。
「ラズリ戻って・・・あっ!!」
意識の無いマテリアを抱えて上昇しようとするも、上から割れた氷柱が降り注ぎラズリに命中してしまった。
バランスを崩したラズリがそのまま底の見えない闇へ共に落ちていく。
「うっ・・・くっ!!」
マテリアを離さぬよう降下するラズリにしがみつくも、私の視界は深い暗闇に飲まれていった。
ーーアライア・ヘウン城 展望の間ーー
「ヴィジアルテ、急ぎ城内へ民を誘導し避難させてください・・・」
「まさか、‘‘あれ‘‘をなさるおつもりですか・・・?」
「民を守るためにはそれしか方法がありません・・・」
「しかし・・・」
目下には崩壊する教会から出現した蒼鱗のドラゴンが見えていた。
「急いで!!」
「仰せのままに・・・」
ヴィジアルテが慌てて展望の間から出ていく。
「あの方の言った通りになってしまった・・・ということは・・・」




