107話 「エルフ」
「エルフ…?」
「そう!あたしはこの森のエルフ!」
「そういうことかぁ、だからここに見覚えのない森があったんだね」
「どういう事ですか?それにエルフって?」
エナさんの説明によると、
エルフは人に似た姿の種族で、主に『ハイエルフ』と『ローエルフ』の二種に分かれている。
共通する特徴としては地を耕し命を息吹き、時をかけて生命溢れる森を創るという習性を持ち、長命である。
違いとして『ハイエルフ』はエルフ族同士で子孫繁栄してきた純血主義の種族で、耳が尖るように長く発達しているのが特徴。同じ種族同士でコミュニティを形成して暮らしている事がほとんど。高難易度の魔法も複数使いこなすことも出来る魔力を持つ。
反対に『ローエルフ』は他種族と交配し子孫を繁栄させてきた種族で、エルフの血が薄くなり耳も一般的な人間のようになっている。他と混血している為、魔力こそ衰えてはいるが本来エルフには使えない魔法を使用することが出来る者もいる。しかし、純血主義の『ハイエルフ』から迫害され、基本的には『ローエルフ』同士でコミュニティを形成するか、人間の世界に紛れて暮らしているか…もしくは…
「エルーチェは、今までずっと一人で生きてきたのかい?」
「うん、そうだよ!」
その生涯をたった独りで生きていく者もいる。
「でも、この広大な森を瞬時に創り出せるものなのでしょうか?」
「うーん、もしかしてだけど…」
エナンジが顎に手を当て何かを考えている。
「エルーチェ、君はおそらく『ローエルフ』だと思うが、転移魔法の類いを使えるんじゃないか?」
「うん!」
「転移…ってまさかこの森ごと転移させてるの…?」
「それなら辻褄が合うね。王都近郊でこのような広大な森は無かったはずだし」
なぜエナさんもシルフさんもそんな平常心を保てているのだろうか…
だとしても、この広大な森全体を転移させるなんてどれほどの魔力が必要なのか…
こんな小さな女の子に出来るものなのだろうか…
いや、そもそも…
どうしてここに転移させたのだろうか…
「エルーチェ、どうしてここに転移させてきたの?」
「わかんない。誰かに呼ばれた気がして、魔法を使ってみたらここにいたの」
「誰かって?」
「わかんない……あっ!」
突然、エルーチェが何かに気付いたかのように声を荒げた。
「誰かがこの森に入ってきてる…何人もいる…」
「さっきの追っ手か?」
シルフが魔法陣を展開して風を生み出している。
「この人達嫌い…あたしの大切な花も草も斬ったり踏んだりして…許さない…」
さっきまでとは雰囲気が明らかに変わった。
エルーチェの周りに荒々しい風が吹き荒れている。
「いたぞ!!!」
背後から追っ手の声が聞こえた。
やはり騎馬隊だった。
「あの人達…お馬さんも乱暴にしてる…許さない…」
「しつこいやつらだ」
シルフが魔法陣を展開して戦闘体勢に入っている。
「シルフさん、フェリスちゃん、おそらくだけど僕達は何もしない方がいい」
「どうしてですか?」
「それは…」
剣を構え、兵士達が突っ込んで来る。
「許さない…!!」
その小さな怒号と共にエルーチェが手を掲げると、突然周囲の木々が呼応して激しく揺れ始めた。
「な、なんだ…?」
「木が動いてる…!?」
「エルフはその容姿と穏やかさからは想像出来ないほど、戦闘に長けているんだ」
地面から植物が生え始め、兵士達に絡み付いていく。
森全体が、エルーチェを護るかのように兵士達へ襲いかかっていった。
「人間はエルフに勝てる生物ではないと思い知らされる程のね…」




