106話 「同い年」
目の前にいる金髪の女の子は村に案内してくれているようでいて、飛ぶ鳥や落ちている木の実などすぐに目移りして進んでいなかった。
「なぁ、本当にこの先に村があるのかい?」
痺れを切らしたシルフが女の子に問いかけるも、その金髪を揺らし鼻歌混じりにただ歩いている。
「そもそもこの辺りに村があった記憶は無いしな…もしかして…」
「もしかして?」
「あの女の子にどこかへ誘われているのかもね」
「でもラズリは警戒していない様子ですし、ついていくのは大丈夫そうかと…」
今までの経験上、ラズリは危険が及ぶ場所へは警戒心を持つようになっていた。
感覚なのか本能なのかは分からないが、あの女の子の後を追うのは問題無さそうだ。
とはいったものの…
「かなり深くまで来たねぇ…」
空が深い緑で覆われはじめ、その隙間から覗く木漏れ日だけが頼りだ。
警戒し始めたのか、流石にエナさんも口数が減ってきているし…
「そういえば、貴女の名前は何て言うの?」
不安だらけで歩くよりは、この子の事を一度知っていく方がいいと思った。
「あたしは『エルーチェ』!お姉さん達のお名前は?」
「私はフェリスでこの子はラズリ、こちらはシルフさんとエナンジ…えっと、エナさんだよ」
「ラズリってそこにいる子?」
エルーチェは無邪気に肩に乗っているラズリを見ている。
「あたしと同い年くらいだね!」
「え、そうなの?エルーチェはいくつ?」
「エルーチェは8歳!」
「フェリス、ラズリはそれくらいなのかい?」
「年齢は詳しくは分からないですが…エルーチェ、どうして同い年くらいに見えたの?」
「だって、私と同じくらいに見えるよ?」
エルーチェの瞳を見て、嘘を付いているようには見えなかった。
ドラゴンでいう8歳はエルーチェのような幼さくらいなのだろうか…
「ラズリ、一緒に遊ぼ!!」
手招きされたラズリがエルーチェの肩に飛び乗ると、二人で歩いていってしまった。
「あ、ちょっと待って二人とも!」
「エルーチェ!君の住む村はこの近くなのか?」
「村?」
不思議そうに振り返り、こちらを見てきたその瞳はやはり純粋に疑問に思っている様子だった。
「君の住む村まで案内してくれていたんじゃなかったか?」
シルフさんも少し戸惑いつつ、エルーチェを警戒させないように問いかけている。
「んー?あたしは『どこから来たの?』って聞かれたから歩いてきた所を戻っているだけだよ?」
「あ、あぁ…そうだったね…」
あのシルフさんが押されている…
「こりゃあ一本取られたね(笑)」
「黙れエナンジ…」
「じ、じゃあ…エルーチェのお家はどこかな?」
「お家?あたしのお家はここだよ?」
身振り手振りもせず、ただ真っ直ぐに答えてくれた。
「えっと…ど、どこかな…?」
「だからぁっ!ここだよっ!」
両手を大きく広げながら跳び跳ねてアピールしてくれている…
それに呼応するように森全体が風に揺られ、木の葉の騒ぐ音が聞こえてきた。
「この森があたしのお家!」
「え?」
「この子は何を言っているんだろうね?」
「いや待てまさか…エルーチェ、君は人間か?」
「ううん、違うよ?」
「人間…じゃないの…?」
そよ風がエルーチェの金色の髪をふわふわと揺らしている。
「うん!あたしはエルフだよ!」




