第103話 「報告」
ギルドに戻り、天変地異寸前だった今回の依頼をマスターへ報告した。
「まさか、アヴァロンの五神獣がこのセレニス大陸にいたと…?」
「翡翠の大樹のような角を持つ牡鹿だった。それにあの時間を操るような力…間違いなく『刻限の翠鹿 ヴェルトゥ』だろうさ」
「時間を操る五神獣ですか?」
「フェリスも見ただろう、ル・トゥナの放った竜巻が時間が巻き戻ったかのように見えたり、バジリスクが急に朽ち始め倒れたのを…あれはバジリスクの寿命の刻限をヴェルトゥが早めて倒したんだ」
「そんなことが出来るなんて…」
「まさに概念を操る五神獣だな」
「ザウール、『希少種』と『神獣種』、そして『五神獣』が同時に出現するなんて本当に知らなかったんだな?」
「なんだ、まさか俺が知っててわざと向かわせたとでも言いたげな顔じゃないか」
「タイミングがあまりにもな」
「ふん、もし知っていたら二人だけで行かせはしない、本当に知らなかった」
シルフとザウールが睨み合う中、ユウビが今回の依頼書を持って仲裁に入ってきた。
「この依頼主ですが、心当たりはありませんか?」
『イリアン・リオート』
「え…?」
この名前を見て、全身に鳥肌が立つのを感じた。
「フェリス、知っているのか?」
「そんなはず…でもこの名前は…」
最後は喧嘩別れをして、故郷を出てからその後の行方は分からなかった。
てっきり村で凍土化に巻き込まれていると思っていたけれど…いや、そもそも私の知っているあの人とは限らないし…
「大丈夫かい?」
「すみません、故郷にいる幼馴染と同じ名前だったので…ユウビさん、この依頼ってこの依頼主の方が直接持ってきましたか?」
「いえ、その依頼書は…」
「僕が遠征中に依頼されて持ち込んだものですよ」
振り返ると、淡緑色のキノコのような髪型をしたあの人が立っていた。
「あなたは確か…エナジーさん…?」
「違いますよフェリスさん、僕はエナンジ・リヒッド、エナと呼んでくださいと伝えたじゃないですか〜」
「す、すみません…」
「エナンジ、遠征中というと北西部からか?」
「そうですマスター、北西部の『リュシオ村』に滞在していた依頼主から受けた案件で…」
「その依頼主ってどんな見た目でしたか?!」
思わず身を乗り出して聞いてしまった。
「おぉ、近くで見ると本当に綺麗な瞳と髪ですね…いや美しい…」
「エナンジ、早く答えてやれ」
「失礼しました、依頼主は確か金色の緩い癖の髪で…そうそう、雷電甲虫を連れていた不思議な青年でしたね」
「雷電甲虫…?!」
間違いない…私の知っている彼だ…
生きていた…生きてくれていたんだ…
「フェリス、リュシオ村はアヴァロンへの船が出るバレナ村の道中だ。立ち寄って探してみようか?」
「はい……はい…」
涙が溢れてくる。
彼に…イリアンに会いたい…
でも、どうしてイリアンがセレニス大陸にいるのだろうか…
それに北西部にいるということはこのギルドにも登録しているのか…
「ユウビさん、この依頼主はこのギルドに登録されている人ですか?」
「いえ、この名前の登録者は当ギルドには確認されていません」
じゃあ情報は詳しくは調べられないか…
それに何らかの理由で北西部まで辿り着いてることになるけれど…
答えは行ってみれば分かるはずだ。




