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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第四章 セレニス大陸編

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102/112

第102話 「白い花」


ここは、どこなのだろうか…


湿地にいたはずなのに、ここは地平線まで白い花が咲き誇る平原だった。

ラズリもいないし、シルフさんも見当たらない…


それでも、どこか心地の良い場所だ…


白い花を踏まぬよう足を進めていくが、どれだけ歩いても景色は変わらない。


ただ、同じ白い花が視界に広がるだけ…


「……い…」


後ろから、声が聞こえた。

振り返ると、良く見えないが遠くに誰かが立っている。


「おーい……こっちよ…」


誰だろうか…


ゆっくりと歩み寄るもその距離はなかなか縮まらない…


「……ス…おいで…」


目が慣れて見えてきたその人は蒼い髪をしていた…



「お母さん…?」


私の知っているその人は優しく微笑みかけてくれている…


「帰ろっか」


抱き締めてくれるその両手に身体を預け、瞳を瞑った。


「お母さん、あのね…」


話したいことが沢山あった。

お母さんはそんな私をただ微笑みながらその瑠璃色の瞳で見つめてくれている。


「私は…ずっとそばにいるから…」








「え…?」


目が覚めると、快晴の空の下にいた。


ラズリの上で気を失っていたのだろうか…

目の前には翡翠の鹿が私を見下ろしながら立ち尽くしていた。


「今のは一体…」


私の知らない記憶…

そのはずなのに、妙に懐かしいというか…とても無関係とは思えなかった…


「あなたが見せてくれたの…?」


問いかけても、ただ翡翠のその瞳は見つめてくるだけだった。


「声をかけてきた人は、私のお母さん?」


何を聞いても返答は無く、視線を外すことも無かった。



「フェリス!!」


遠くでシルフさんの声が聞こえたその瞬間…


「あ…」 


ヴェルトゥの背後から倒れていたバジリスクが現れた。


その巨大な牙がヴェルトゥ目掛けて襲いかかってきているが、気付いていないのか微動だにしていない。


「あ、危ないっ!!」


その瞬間、バジリスクの動きが止まった。


大樹のような翡翠の角が淡く輝いたかと思うと、バジリスクの身体が朽ち始め、その場に眠るように横たわり、二度と動かなかった。


「まさか…死んでる…?」


バジリスクが倒れると、ヴェルトゥは翡翠の光を放ち眼を眩ませてきた。

光が落ち着き、もう一度眼を開けた時にはもう姿は見えなかった。


「フェリス!無事か!」

「シルフさん…」

「一体何があった、ヴェルトゥは?」

「分からないです…気付いたらもう…」

「ヴェルトゥがバジリスクをやったのか?」

「それも分からないです…」


何があったのか、全く分からない…


ただ分かっているのは、あの白い花の平原と私を呼んでいたあの人の記憶だけが頭の片隅に残り続けていることだった。



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