第101話 「刻限」
「五神獣…?!」
今、私達の目の前に『希少種』と『神獣種』、そして『五神獣』が同時に出現している…
「あの大樹のような翡翠の角、間違いなくヴェルトゥだ…だが、アヴァロンを統べる五神獣がどうしてここに…」
「見間違いでなければ、ユニケルスが姿を変えていたようにも見えましたが…」
ル・トゥナの操る嵐が上空へと昇り、辺り一帯が不気味に静まり返っている…
「まずい…高度を下げて攻撃に備えろ!!障害物を使って避けるんだ!!」
嵐が上昇した空から黒雲が竜巻のように回転し、水面に立つヴェルトゥを目掛けて降下してきていた。
「ラズリっ!!」
一気に高度を下げ、水面を翼で切りながら距離を取る。
黒雲の竜巻が雷轟を纏いながらヴェルトゥに突っ込む中、周辺がその暴風で荒れ狂っていく。
だが、竜巻から距離を取っているつもりがなぜかラズリが竜巻から離れなくなっている…
「まさか、吸い込まれてる…!?」
このままでは巻き込まれる…なんとか脱出しようにもラズリの飛行力でも抵抗できない…
暴風と雷が轟く中、目の前まで竜巻が迫るその時だった。
視界が翡翠の光に包まれ、その眩しさに思わず眼を瞑る。
ゆっくりと瞳を開けた時、目の前の黒雲の竜巻は時間が止まったかのように動かなくなっていた。
「えっ…何が起きて…」
竜巻の先にいたヴェルトゥの角がさらに強く発光し、その竜巻は時間が巻き戻るかのようにル・トゥナに向けて牙を剥いた。
まさか自らの竜巻に攻撃されるとは思っていなかったのだろう。
直撃し、怯んだル・トゥナは背を向け上空へと姿を消した。
一瞬だった。
自らの何十倍もの体格差のあった相手をヴェルトゥは一瞬で退けてしまったのだ。
辺りは嵐が去り、快晴の空へと変わる。
ラズリに跨がりながら着底すると、ヴェルトゥがこちらに向かって歩み寄ってきていた。
だが、敵意を感じていないのかラズリは不思議と警戒していなかった。
鳥の囀ずる声と心地の良い風が吹く中、私だけが不安に駆られていた。
目の前でその足を止めたヴェルトゥは角も合わせればラズリに乗っていても私の三倍程の大きさ。
だが大きさではなく、その神々しさに私は言葉を失ってしまっていた。
こんなにも美しい獣がいることに、何も言葉が出てこなかった。
ゆっくりと、その翡翠の瞳が近付いて来ている。
身体が硬直して動けないが、何故か抵抗しようと思わない。
その翡翠の瞳は私の瑠璃の瞳を覗き込んでくる。
「え…?」
気が付くと、私は見知らぬ白い花の咲き誇る平原に立っていた。




