メールが来ないんだよ!
再び、蒲生の視点に戻ります
うろうろ。
そわそわ。
俺はスマホを眺めながら、広くはない家の中をうろうろしていた。
焦燥感…
焦っていらいらすること
不安感…
気がかりで落ち着かないこと
来ない。遅い。
時計を見る。もうすぐ23時になろうとしている。
今日はベランダから空を見上げて月は見えない。
真っ暗な空だ。今のオレの気持ちとおんなじだ。
あー!オレは何やってんだ!
なんで、オレが待ってんだよ!
PiPiPiPi~!
あっ!
「もしもし!もしもひもしもし!」
「出るのはやっ!」
「んでもって、もしが多すぎて気持ち悪っ!」
「…なんだ、お前か。」
「なんだはないでしょ!カワイイ妹に向かって!」
「カワイイ?え?」
「どこ聞き返してんだよ!オッサン!」
「ちょうどよかった!聞いてくれよお」
「え、嫌。」
「ひどっ!」
「さ、仕事、仕事…お世話になっております。株式会社サンライズ企画の蒲生でございます。このたび弊社にお越しいただく件につきまして、日程は弊社からeメールにてお送りさせていただきました通り、11月10日午前10時より弊社の本社三階にてお願いいたします。先般メールにてお送りいただいた資料に加えて、事業将来性分析表を追加願います…さらに、別添書類の…」
「ちょっと聞いてくれよお~」
淡々と仕事の話をする妹に用はない。こっちが聞いてほしいのはよお~
「キモっ!ちょ、オッサン何よ!もうわかったわ。ちょっと待って。オフィス出るから」
妹は小声でオレを諭すと何やら移動をし始めた。
…
…
「で、なに?」
「メールが来ないんだよ!そしてオレはなんでメールを気にしてんだよ!」
「知らないわよ!切るよ「あー!ごめん!ごめん!」」
「実はな…」
オレはこの間の二海とのやりとりをざっくりと説明した。
「えー!!!!…
あまりの大声に、スマホを耳から30㎝以上離す。
…
…
…妄想…?」
「違うよ!妄想は確かにするけど、これは違うよ!」
「えー。じゃあ、その娘も目が腐ってんじゃない?」
…ひどい言い様だ…
へこむぜ兄は。
「腐ってねえよ!」
「じゃあ、眩んでる?」
「違うよ!たぶん!」
否定できない…。
「しっかし、とんでもない物好きがいたもんだね。で、告白されて、もう付き合ってるの?」
「いや。付き合ってない」
「え?なんで?」
「君の想いには応えられないって伝えたよ」
…
「…ばっかじゃないの!?それでもカッコつけてるつもり!?兄ちゃんみたいな歳くったオッサンが女性に好かれるなんて滅多にないよ!」
「違うよ。こんな歳くったオッサンだからこそだよ。彼女ほど魅力的な人なら、もっと同年代で、見た目も、中身もいい、パートナーが見つけられるはずなんだよ。こんな歳の離れたオッサンよりも幸せにしてもらえるよ」
オレは今の想いを率直に言った。
「なによソレ。その、上から目線、超ムカつくんだけど。」
「うっ」
「あんたに彼女の幸せ決めれる権利なんてないでしょ!決めれるのは二海さんでしょ!」
「た、たしかに」
「兄ちゃんの幸せは兄ちゃんしか決められない。そうでしょ?」
「う、うん」
「アンタ今あの娘のメール待ってたんでしょ!メール来てほしいんでしょ!なんで素直になれないの?!もっと自分の幸せに貪欲になったほうがいいんじゃないの?!」
オレは反論できなかった。歳の離れた妹に、さらに歳の離れた彼女のことでグウの音もでないほど言い負かされた。
電話を切ったあと、彼女からメールが来ていた。
10月23日(月)23:30
YukiFutami1020@ssweb.com
Sab:遅くに申し訳ありません
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ただ今帰宅しました。
今日もお疲れ様でした(^_^)
遅くにメール申し訳ありません
今日は小松さんと浦野係長と一緒にお食事に
行ってきました。
すっかり話し込んで遅くなっちゃいました(^_^;
でもとっても楽しかった!
蒲生さんはもうおやすみになられていますか?
今日は月は見えませんが、星はたくさん!
秋の空はやっぱり気持ちがいいですね。
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開け放った窓から、涼やかな風が部屋に吹き抜けた。
オレはベランダから空を見上げる。
そうだ。月は見えない夜でも、空には一面に銀色の星が瞬いている。




