再出発
厄災の洞穴・会計部にてライムは最後の手続きを終えていた。
机の向こう側には見慣れたスケルトン会計士が対応してくれたが目を合わせようとはしてくれない。
「こちらが退職金になります」
差し出された袋のずしりとした重さにライムは思わず目を丸くした。
「こんなに?」
「……百年以上勤務していましたから」
スケルトン会計士が小さく答える。
「本当は・・・もっと出るはずだったんですが…」
その先は言わなかった。
「確認したか?」
後ろから声が響く。
振り返るとそこにはルルーガがいた。
隣にはベルディアの商人のあの太った男もいる。
「ええ。確認しました」
「そうか」
ルルーガは満足そうに頷いた。
「これで我々との関係は終了だ。長い間ご苦労だったな」
口では労っているが目は笑っていない。
「正直な話をしよう」
ルルーガは腕を組んだ。
「私はお前のような人材のことをゴミだと思っている。おや?これはゴミに失礼かな?」
ライムは黙って聞く。
「戦えず指揮もとることはできずまともに外交もできない。そんな人材に父上は給料を払い過ぎていた」
ベルディア商人も頷く。
「全くですな!魔金貨千枚ですぞ?我々ならもっと有能な人材を4人は雇えますぞ。新魔王様直属の四天王ですら雇用できましょう!」
ライムは少しだけ俯いた。確かにそうかもしれない。自分は戦えない。ただスライムを育てていただけだ。
ルルーガは続ける。
「だが安心しろ。その金があれば田舎で暮らすくらいはできるだろう?小さな農園でも買って余生を過ごすといい」
その言葉にライムは少しだけ笑った。
余生
まだ百歳だぞ。
魔族としてはまだまだ中堅だ。
「そうですね」
ライムは頷く。
「参考にします」
その反応が気に入らなかったのかルルーガは眉をひそめた。
「それと二度と厄災の洞穴へ戻るな。今後お前が必要になることはない」
ライムは静かに答えた。
「そうですね。俺も戻るつもりはないです。」
そして背を向け最後まで振り返らなかった。
百年以上勤めた職場である厄災の洞穴での生活が終わりを告げた。
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