スライム係は不要らしい
会議室は静まり返っていた。
誰も口を開かずルルーガの前には一枚の資料がある。
そしてその最上段には
【スライム牧場】
の文字が書かれている。
「まず結論から言おう」
ルルーガが言った。
「スライム牧場は廃止する」
ざわっ。
会議室が揺れた。
最初に立ち上がったのはミノタウロス隊長だった。
「待ってください!」
「ライム殿の牧場が無くなれば我々の餌はどうなるのです!?」
ルルーガは冷静だった。
「それに関しては安心しろ。ベルディアから高品質な食料を仕入れる約定を取り付けている」
「ええ。魔物のみなさんは何も心配することはございませんよ!」
太った商人風の人間がルルーガの言葉に追従する。
「しかし!そもそもなぜここに人間風情がいるのだ!」
「信頼の証として人間を迎えることは何もおかしくはあるまい。この話はそれで終わりだ!」
ルルーガはぴしゃりと切り捨てる。
ミノタウロス隊長が悔しそうに拳を握った。
今度は岩石ゴーレム隊長が立ち上がる。
「スライムハ、ワレワレヲズットササエテクレタ!ソレヲキルノカ!?」
「もちろんだ」
ルルーガは即答した。
「感情で経営はできない。ましてや無能を守るためにリソースを割くことはできない。」
その言葉にライムは少しだけ違和感を覚えた。ルルーガの言うことは間違っていない。ファンリルも時に冷徹な判断をすることはあった。しかしファンリルならこんな言い方はしなかった。
「次だ」
ルルーガが資料をめくる。
「ライム」
「はい」
「お前の給料だ」
ライムは首を傾げた。
スライム飼育係としての給料。
それがどうしたのだろう。
「年間魔金貨千枚」
会議室がざわつく。
「高すぎる」
ルルーガが吐き捨てる。
「ただの餌係に払う額ではない」
ライムは固まった。
魔金貨千枚。
ただの餌係に与える見返りとしては確かに多い。
だがそれを決めたのはファンリルだ。
「父上はお前を過大評価していた」
「え……?」
「戦闘能力もなく階層も守れない。その上魔法もただの水と変わらない魔力水を放出するというだけという平凡。何故これほどの給料を払っていたのか理解できん」
会議室の空気が凍る。
ライムは黙っていた。
何も言い返せない。なぜなら事実自分は強くない。
「そのようにライム殿を侮辱するのはいかがなものか!?」
今度はリザードマン警備長だった。
「ライム殿は毎日誰より早く起きて誰より遅くまで働いている!」
「それがどうした?」
ルルーガの声が飛び、口を閉じるリザードマンに続けるように言葉をかける。
「それは業務ではない」
「ライムが勝手にやっていただけだ。もちろんその姿勢は素晴らしい。しかしだからと言って何も成果を出していないものを厚遇するわけにはいかん。」
ライムの胸が少し痛んだ。
勝手に・・・確かにそうだ。誰かに命令された訳じゃない。
ただ誰かが困っていたから助けただけだった。
「最後の理由だ」
ルルーガが立ち上がり、窓の外を指差した。
広大なスライム牧場。
「我々はこれから変わる!冒険者を殺す時代は終わりだ!観光客を呼び交易し発展!それがこれからの厄災の洞穴だ」
ルルーガは振り返りライムを見る。
「スライムゼリーなど誰も求めていない!ベルディアから高級食材を買えばいいではないか!そもそもスライム牧場は迷信を信じる哀れな父が作った時代遅れの産物だ!」
誰も何も言えずに会議室が静まり返る。
そしてルルーガは告げた。
「よって、ライム。お前を本日付で解雇する」
その瞬間だった。
ぷるぅっ!!
会議室の扉が開くとぷる吉が飛び込んできた。
一直線にライムの足元へ近づきぷるぷると震えている。
「ぷる吉?」
ぷるぅ……
泣いていた。
まるで行かないでと言っているようだった。
ライムはしゃがみ込みそして優しく頭を撫でた。
「大丈夫だ。また会えるさ」
そう力なく呟く。だが自分でもその言葉に自信はなかった。
もし少しでも
「続きが気になる!」
「面白かった!」
と思っていただけたら、
【★★★★★】や【ブックマーク】を押していただけるとめちゃくちゃ励みになります!
それではまた次回!




