不要な部署
ルルーガの就任式が終わった翌日にライムは本部会議室へ呼び出されていた。
普段は使われない最下層にある幹部会議専用の部屋の重厚な扉を開くとそこには見慣れない魔物達が集まっていた。
「…人間もいる?」
疑問を持ちながらも中を眺めると最奥の席にはルルーガが座っている。
「来たか・・・スライムマスター・・・いや餌係のライムだな・・・」
ライムは静かに頭を下げた。
するとルルーガは一枚の書類を机へ置いた。
「まずお前の部署について確認したい。」
ライムは首を傾げながら応える。
「スライム牧場のことですか?」
ルルーガは頷いた。
「現在、牧場維持費はいくらだ?」
スケルトン会計士が答える。
「年間魔金貨三万枚ほどです」
会議室がざわつく。
かなりの金額にルルーガは腕を組み唸る。
「ふむ・・・高すぎるな・・・」
「そ、そうでしょうか?」
「ああ・・・そうだ」
即答だった。
「スライムは弱く、それ故に戦力にもならない。それなのに莫大な維持費がかかっている」
ライムは思わず眉をひそめた。
「いや、スライムは重要ですよ」
「どう重要なんだ?」
ルルーガが聞き返す。
ライムは当たり前のように答えた。
「スライムは魔物たちへ配給される食料となっています」
会議室が静まる。
「食料?」
「はい」
ライムは頷く。
「スライムは魔素を大量に含んでいて栄養価も高く魔物にとっては理想的な食料です!人間で言うなら完全栄養食みたいなものですね」
会議室にいる数人が頷く中ライムは続ける。
「また、魔物は食べた魔力によって成長します。良質な餌を食べれば、その分強くなるし進化しやすくもなる。だから厄災の洞穴の魔物達は強いんです」
実際ミノタウロス達やゴーレムたちが騒いだのも最近進化を目前とする者が多く良質な食事が大量に必要であったことも理由だった。
しかしルルーガは首を振る。
「そのような研究結果は存在しない。」
「え?」
ライムが固まる。
「ベルディアの学者達にも確認した。スライム食で強くなるというのはあくまで民間に伝わる迷信だ。スライム食による有意な成長効果は認められていない」
ライムは困惑して頭を抱える。おかしい・・・実際に成果は出ている。だが証明できない。なぜならそもそも良質なスライムを大量に育てられるのはライムしかいないからだ。
ルルーガはさらに続ける。
「今の時代、ダンジョンは変わらなければならない。昔のように冒険者を殺して稼ぐだけでは駄目なのだ。我々ダンジョンは魔神連邦から領地を預かる存在だ。利益を出し、発展し、魔神連邦へ貢献しなければならない」
ライムは黙ってその言葉を聞いていた。言っていること自体は間違っていないからだ。
「だから私は改革する」
ルルーガは立ち上がる。
そして目の前の資料を持ち上げた。
そこには大きく
【コスト削減対象候補】
【スライム牧場】
の文字があった。
ライムの心臓が大きく跳ねる。
「……本気ですか?」
ルルーガは迷いなく答えた。
「ああ。私は本気だ」
会議室の空気が重く沈んだ。
もし少しでも
「続きが気になる!」
「面白かった!」
と思っていただけたら、
【★★★★★】や【ブックマーク】を押していただけるとめちゃくちゃ励みになります!
それではまた次回!




