ミレイアの新しい挑戦
ミレイアは自室の机へ向かっていた。
目の前には、一冊の分厚い雑誌が置かれており、その表紙には大きく
『魔ーキャン 今月の資格特集!』
かかれている。
「うぅ……。」
ページをめくりながら唸る。
「私にも取れる資格はありますでしょうか……。」
ライムから貰った特別ボーナスによって初めての仕送りも終え、資格取得のための受験料も、十分に残してある。
だからこそ今が挑戦する時だった。
「まずは魔法系……。」
ぱらり。
「……無理ですわ。」
ミレイアは苦笑いした。
「私、魔法は使えませんもの・・・これは剣術資格……。」
一瞬だけ目が輝く。
「ちょっと格好いいですわね。」
魔なる剣を構える自分を想像する。
ぶんっ。
勢いよく振りかぶり敵に斬りかかる。
そして。
「0ダメージですわ。」
しょんぼり。
「意味がありませんわね……。」
さらにページをめくる。
「槍術。」
「斧術。」
「格闘術。」
「全部だめですわ……。」
ミレイアは机へ突っ伏した。
「攻撃力がないというのは、不便ですわねぇ……。」
それでも諦めずにページをめくり続ける。
すると。
「あっ……。」
ミレイアの手が止まった。
「こ、これなら!」
そこには、一つの資格が載っていた。
『衝撃制御技能士』
衝撃の伝達。重量移動。押し出し技術。
対象へ効率よく力を伝えるための専門資格。
「これなら……。」
ミレイアは食い入るように読む。
「衝撃を伝える技術。押す力を効率よく使う資格……。」
スポンジゴーレムである自分の特徴である柔らかな身体に巨大な質量。
「これですわ!」
思わず立ち上がる。
「私にぴったりですわ!」
攻撃できなくてもいい。
仲間が戦うための数瞬を作るために敵を押し飛ばせれば。
味方を助けられる!ダンジョンを守れる!
「絶対に取得しますわ!」
拳を握る。
新しい目標が決まった瞬間だった。
◇
「……あっ!」
ミレイアは壁の時計を見る。
「いけません!」
慌てて資格雑誌を閉じ、今度は机いっぱいに大きな設計図を広げた。
「ボス部屋の改築もしなければなりませんわ!」
鉛筆を走らせる。
「入口を少し広くして……。」
「自動人形さんはこちらへ……。」
「退避用の通路も必要ですわね。」
さらに。
「落とし穴との連携も……。」
「ここならスライムさん達も移動しやすそうですわ。」
次々と新しい案を書き込んでいく。
もっと良いダンジョンを作るためにライムから任された仕事。
考えれば考えるほど、新しい案が浮かんできた。
「ふふっ。」
自然と笑みが零れる。
「これは、また忙しくなります!あっ!もし資格を無事取得できたときのための設備にあれがあれば!」
部屋には鉛筆の走る音だけが響いていた。
◇
一方、その頃人里離れた山奥。
暗い洞窟の奥で何者かが岩壁を拳で叩きつけた。
轟音が洞窟中へ響く。
「ゆるさねぇ……。」
低く、濁った声。
「ミレイアのやろう……。」
拳が震える。
「裏切りやがって……!」
怒りに満ちた叫びが、暗い洞窟の奥へと何度も木霊した。
その瞳には憎悪だけが燃えていた。
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