表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/39

ダンジョン拡張

「よーし!」


エリシアがつるはしを掲げた。


「早速、掘っていきましょう!」


「待て待て待て」


ライムは慌てて止めた。


「なんですか?」


ライムはエリシアからつるはしを取り上げる。


「素人が適当に穴なんて掘ったら、崩落して即潰れてしまうだろ」


「……?」


エリシアが天井と自分の身体を見比べる。


「私はスライムなので潰れても大丈夫ですよ?」


「俺が駄目なんだよ」


「なるほど!」


「それに、ぷる吉達も危ないだろ」


ぷるっ。


足元にいたぷる吉が震えた。


エリシアはしばらく考える。


「では、どうすれば?」


「こうするんだよ」


ライムはダンジョンコアの前に座った。


現在のダンジョンコアには、いくつかの機能が存在する。


地図。

ショップ。

雇用契約。

そして商会契約。


「魔神連邦にはダンジョン専門の商会がいくつもある」


「ダンジョン専門?」


「ああ」


ライムは契約可能な商会一覧を表示した。


武器

防具

食料

建築

土木工事

と数え切れないほどの商会が表示される。


「なるほど!」


エリシアが感心の声をあげる。


「つまり、マスターは他人に全部やらせて楽をするのですね!」


「言い方!」


ライムは頭を掻いた。


「専門家に任せた方がいい仕事もあるんだよ!俺達は今はまだ洞窟を掘って拡げる技術なんて持ってないだろ?」


「ありません!」


「だから専門家に頼むんだ」


ライムは一覧を下へ送っていき一つの商会を選んだ。


『ゴブリン商会』


魔神連邦で活動する中堅商会であり主な業務内容は坑道建設、地下施設工事、ダンジョン拡張。


仕事は速く、安いと評判だ。


「ここにしよう」


「ゴブリンですか?」


ライムは契約内容を確認する。


第一階層の全体的な拡張及び通路、小部屋、スライム用の水路、そして将来的な拡張を考慮した基礎工事。


「これでいいな」


契約ボタンを押すとダンジョンコアが光った。


『ゴブリン商会との商会契約が成立しました』


『現地調査担当者を派遣します』


「これで終わりだ」


「もう終わったんですね!担当者とやらはいつ来るんでしょう?」


「さあな」


ライムは首を傾げた。


「早くても明日くらいじゃないか?」


その時、洞窟の外の地面が揺れた。


ドドドドドドドドッ!


「敵襲です!」


エリシアが飛び上がる。


「マスター! ついに人類が攻めてきました!」


「いや、ちょっと待て」


ドドドドドドドッ!


音が近づく。


やがて洞窟の入口に、何台もの大型馬車が止まった。


いや馬車ではない。


巨大なトカゲが引いている。


荷台にはつるはし。

木材。

鉄骨。

魔導灯。

大量の工事道具。

そして何十人ものゴブリン達が乗っていた。


「ゴブリン商会だ!」


先頭にいたゴブリンが叫ぶ。


「現場はここかぁ!?」


「早すぎるだろ!?」


◇◇◇


「契約してくれてありがとな、あんちゃん」


ゴブリンの親方は腕を組んで豪快に笑う。


他のゴブリンより頭一つ大きい太い腕に傷だらけの顔そして腰には何本もの工具が下げられている。


「ただし」


親方がライムを見る。


「工事に関しては余計な口出しはせんでくれ」


「……」


エリシアの眉が動いた。


「このゴブリン、大丈夫なんですか?」


「聞こえてるぞ、嬢ちゃん」


「私達のダンジョンなのに!」


エリシアが頬を膨らませた。


「マスター! やっぱり私が掘ります!」


「だから崩れるって言ってるだろ」


「一回だけ!」


「一回で崩れたら終わりなんだよ」


ライムはため息をついたそれから親方を見る。


「まあ、腕は確かなはずだしな!俺達素人が考えるダンジョンより、よっぽどしっかり作ってくれるさ」


エリシアが驚いた顔をする。


「マスターは悔しくないんですか?」


「何が?」


「自分のダンジョンなのに、口を出すなと言われたんですよ!」


「別に」


ライムは答えた。


「俺は土木工事の素人だからな」


できないことはできる奴に任せる。


厄災の洞穴でも、そうだった。


料理は料理人

警備は警備隊

会計は会計士

それぞれの仕事には、それぞれの専門家がいる。


ダンジョンマスターが全部できる必要はない。


「俺の仕事は、こいつらが仕事をしやすい環境を作ることだろ」


「……」


ゴブリンの親方が目を細めた。


そしてニヤリと笑う。


「さすが、S級ダンジョンの元最高幹部様だな!話が分かるじゃねえか」


「最高幹部?」


エリシアが首を傾げる。


「マスター、最高幹部だったんですか?」


「違う違う」


ライムは手を振った。


「俺はただのスライム飼育係だよ」


「……」


親方の笑顔が消えた。


「はっ?」


親方は首を振る。


「お前さんの経歴書、S級ダンジョン勤務百年以上って書いてあったぞ」


「そうだな。百年とちょっとぐらいだが…」


エリシアが胸を張る。


「マスターはすごいのです!」


「いや、だから大したことはしてないって」


「……なるほどな」


親方は何かを察したように頷いた。


「噂より面白そうなあんちゃんだ」


「噂?」


「こっちの話だ」


親方は契約書を取り出した。


「それじゃあ、契約内容の確認をさせてくれや」


ライムと親方がダンジョンコアの前に座る。


「えーと」


親方が契約内容を読み上げる。


「今後、拡張の予定はあるが、とりあえず一階層分」


「ああ」


「ボス部屋はなし」


「まだボスを任せられる魔物がエリシアしかいないからな。エリシアはまだ生まれたばかりだから魔人の子権利条約の要項に引っかかって前線を任せることができないんだ。」


「まあ、問題ねえよ」


親方は頷いた。


「初期のダンジョンにありがちな契約内容だな」


指を滑らせる。


「通路幅は標準、小部屋は三つ、水路あり、天井は少し高め・・・将来的な地下拡張を考えて、下方向にも空間を残す」


「そうだ」


「なかなかいいじゃねえか!」


親方は頷いた。


「無理に広げようとしてねえのは好感が持てるじゃねえか!」


「最初からデカいダンジョンを作っても、維持できないからな」


「その通りだ!だがそれをわかってねえ若造のなんて多いことか!」


親方が笑う。


「新人は最初から城でも作ろうとしやがる!魔素も金もねえのにな!それでも最初は補助金が出るから夢みちまうんだろうが・・・」


「それは大変ですね!でも私達は違いますよ!」


「そうだな」


「いつか世界一の城を作ります!」


「結局、城は作るのか!まあそん時はわしに城づくりを任せてくれや!」


親方がまた豪快に笑った。


そして契約書の最後を見る。


「それで、肝心なメインの魔物は……」


親方の動きが止まった。


「ス、スライム?」


「そうだ」


親方が顔を上げ洞窟の奥を見る。


ぷるぷる。

ぷるぷる。


水場では、十数匹のスライムが跳ねていた。


「……」


親方が黙った。


「やっぱり駄目でしょうか?」


エリシアが不安そうに聞く。


「弱いし、すぐ潰れますけど、でもでも!食べられます!」


「自分で言ってて悲しくならないか?」


エリシアが少し小さくなった。


だが親方は違った。


「おいおい……」


その口元がゆっくりと上がる。


「こりゃあ……なかなか面白えじゃねえか!」


「え?」


「お前ら!」


親方が叫ぶと外で待機していたゴブリン達が一斉に振り返った。


「設計変更だ!一階層はスライム専用のダンジョンを作るぞ!」


「おおおおおおおおっ!」


歓声が上がった。


「水路を増やせ!床の傾斜も計算し直せ!小型魔物用の抜け穴は変更だ!スライムなら少しの隙間でも潜り込める・・・それを活用すれば天井からの奇襲経路も作れるな!」


「親方!」


一人の若いゴブリンが手を挙げた。


「スライムって魔力水の塊なんすよね!魔方陣に沿って這わせればお手軽に儀式魔法できませんかね!?」


「天才か!」


「採用だ!」


ゴブリン達が一斉に走り出した。


「待ってください!」


エリシアが慌てる。


「何か話が大きくなってませんか!?」


「大丈夫だろ」


ライムは笑った。


「楽しそうだし」


「そこですか!?」


その後ライムと親方はダンジョンコアの前に座り、細かい契約内容を詰め始めた。


「この水路はもう少し深くしてくれ」


「スライムが溺れねえか?」


「本当なら企業秘密にしたいんだが・・・普通の水ならまずいが水にちょっと細工をするから大丈夫だ」


「なるほどな」


「それと、ここの壁には小さな穴をいくつか作りたい」


「奇襲用か?」


「いや」


ライムは少し考える。


「多分、ぷる吉が迷子になるからな。それに他のスライムの緊急用避難経路にもなる!」


ぷるっ!?


「必要ですね!」


エリシアが即答した。


ぷるぷるぷる!


ぷる吉が抗議する。


「ぷる吉はよく迷子になるじゃないか?」


ぷるっ!ぷるぷる!


「この前も水場の裏に挟まってただろ」


ぷる……。


ぷる吉がしぼんだ。


「面白えダンジョンになりそうじゃねえか」


「ああ」


ライムも笑った。


まだ小さな洞窟だ。


魔物はスライムだけで戦えるボスもいないしまともな罠もない。


それでも少しずつ自分達のダンジョンが形になり始めていた。


その時”ピコン”とダンジョンコアから音が鳴った。


「どうしました?」


「メールだ」


ライムが画面を開く。


「魔ロウワークからでしょうか?」


「いや?」


見覚えのない差出人だった。


件名。


『契約成立のお知らせ』


「……契約?」


ライムは首を傾げた。


「俺、ゴブリン商会以外と契約したか?」


「してませんよ?」


二人の視線がゆっくりと動く。


水場の近くにいたぷる吉がこちらをみながら嬉しそうに震えている。


ぷるぷるぷるぷる!


ライムはメールを開くとそこに書かれていた文字を見て固まった。


「……は?」


「どうしたんですか、マスター?」


ライムは画面を見たまま答えた。


「なんか…一週間後に面接希望者がくるらしい。」

もし少しでも

「続きが気になる!」

「面白かった!」

と思っていただけたら、

【★★★★★】や【ブックマーク】を押していただけるとめちゃくちゃ励みになります!

それではまた次回!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ